トカゲ太郎のワンダー・ワールド
動物の感情と知覚
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最も長い旅路    ― オオソリハシシギ ―

Bar-tailed Godwit

トカゲ太郎
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オオソリハシシギはハトぐらいの大きさで、口ばしから尾までの長さが約40cm。大きな鳥ではないけれど、世界中の鳥の中で最長の渡りをすることで知られている。オオソリハシシギの移動距離はアラスカからニュージーランドまでの約11000km。片道の所要日数はだいたい8日から9日間。冬場は暖かいニュージーランドの海岸沿いで過ごし、夏には繁殖のためアラスカに滞在する。アフリカや東アジア、オーストラリアなどに冬場移住する群れもある。

鳥の渡りは大変な仕事で、鳥たちは出発に向けて必要な準備をしなければならない。オオソリハシシギの場合、途中で一時滞在などせず長旅を続けるため、全体重の60%にもあたる脂肪を身体の中に蓄えなければならない。さらに風の向きを読んで出発の時期を決め、旅の間風を利用することでエネルギーの消費量を抑える。さらに目的地までの旅のコースも正確に知っていなければならない。そのため地磁気がひとつの指標になるが、雲や霧が障害となることもあり完璧なものとはいいがたい。そのような時は加えて太陽を目安にして自らの位置を知る。人間にはできないが、鳥は一日を通してさまざまに変化している太陽の光見ることができるからだ。さらにオオソリハシシギは移動中に目にする海岸や山々などの地形、星なども記憶しているようだ。

小さな身体に小枝のような脚のついた鳥だけど、大変な能力を内に秘めている。



 

笑っている? とんでもない! 恐いのです    ― テレビ・チンパンジーの未来 ―

Chimpanzee

トカゲ太郎
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チンパンジーの知能は驚くほど高い。食べ物を得るため道具を作りそれを使うことができる。彼らは記号を学び、それを使って人間と会話することもできるし、人間と同じような行動をすることもしばしばある。でも、彼らは独自の社会を持っていて、その社会のしくみは人間の社会と同じものでは決してない。

チンパンジーの子どもにとって、群れとともに暮らし、生き残っていくには母親の保護が必要不可欠だ。ふつう産まれたてのチンパンジーの赤ちゃんは母親から食べ物をもらい、保護されながら暖かいぬくもりの中で少なくとも初めの1年間は過ごす。2才ぐらいになると母親はようやく子どものチンパンジーが独りで行動することを許すようになる。

不幸なことにほとんどのテレビに登場するチンパンジーの赤ちゃんはそのような経験を経ていない。まだ母チンパンジーによる育児を必要としているにもかかわらず母親から引き離されてしまうからだ。その後、チンパンジーの赤ちゃんは母親を失った心の傷がまだ治っていないのにテレビの“演技”に必要な訓練をさせられる。ほとんどの赤ちゃんチンパンジーはひどい扱われかたをされる。笑っているように見える表情は実はおびえているのだ。

良い環境で育ったチンパンジーでさえ、8才ぐらいになると力が強すぎるため手に負えなくなる。ただ、だからと言って群れにもどすわけにはいかない。群れの仲間とうまく生活していく習慣を身につけていないからだ。このためテレビ用チンパンジーが最後に行き着く先は非公認な動物園か十分な設備を備えていない施設などだ。そして、残りの時間をひたすら鉄格子の中で過ごすことになる。

チンパンジーはだいたい60年ぐらいは生きる。



 

紡錘細胞の不思議

紡錘細胞の不思議(動物の感情)

トカゲ太郎
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紡錘細胞は人間と類人猿のどちらの脳にも見つかっている。紡錘細胞は感情を処理し、群れや人間関係を調整する働きをもっている。最近になってザトウクジラやシャチ、マッコウクジラ、そしてアフリカゾウやアジアゾウなど、他の大型哺乳類の脳の中にも紡錘細胞が存在することがわかってきた。それらの動物が複雑なコミュニケーション能力や社会構造をもっていることは無理もないことなのだ。

紡錘細胞は、人間が他者の複雑な感情の状態を知覚すると同時にそれにすばやく反応することを可能にしている。だからこそ人間は愛情を感じたり、他者の感情を理解できたりするのだ。ザトウクジラやアフリカゾウはおそらく人間とは違った進化をたどって紡錘細胞を発達させて来た。ただ、彼らの両方ともが愛情や他者の痛みを感じることができると見てまず間違いないだろう。例を挙げれば、密猟者に母親を殺された孤児のゾウは不眠や悪夢、攻撃性の高まりなど精神的な問題を抱えている場合が多い。このような孤児のゾウたちは人間が献身的に世話をする必要がある。なぜなら母親や親せきの愛情を失った悲しみと記憶によみがえる恐ろしい出来事を早く忘れる必要があるからだ。そして、その時初めて普通の生活に復帰できる。これは世話係の人々の愛情を子ゾウたちが理解できることを示している。