トカゲ太郎のワンダー・ワールド
守ろう 猛禽類
English

(2016年2月27日)

猛禽類とは

猛禽類とはハヤブサ、フクロウ、タカのそれぞれの仲間のことだ。ちなみにワシはタカの仲間に含まれる。たいていの猛禽類は、ハトより大きいサイズで、他の生き物を捕まえて食べる肉食の鳥のことを指す。とはいえ、種類によって好きな食べ物に違いがある。例えば、イヌワシのほとんどの獲物はノウサギやヘビだし、ミサゴは魚を主に獲る。そういうわけで、食べ物の種類が変わると暮らしている場所も変わる。イヌワシは主に山岳地域に住んでいて、ミサゴは魚のいる川や海岸沿いを縄張りにしている。繁殖もそれぞれの自然環境に合わせて行うことから、暮らしている地域の自然が保たれていることで猛禽類たちは生きていける。

コミミズクは草原や河川敷など開けた場所が好きだ。フクロウの仲間はネズミをよく食べてくれるので、農業の被害を防いでくれる役割もある。
 コミミズクは草原や河川敷など開けた場所が好きだ。フクロウの仲間はネズミをよく食べてくれるので、農業の被害を防いでくれる役割もある。
  コミミズク
コミミズク

イケメンだからこそ

さて、日本の猛禽類の中でも特に国(環境省)が力を入れて守っているのが、イヌワシ、クマタカ、そしてオオタカだ。なぜこの三種かというと、やはり数が減ったり、安定しなかったりしているからだ。その理由ははじめに書いたとおり、暮らしている環境が変化してしまうことが主な原因だ。加えて、これらの猛禽類はそのカッコよさから愛好家も多く、飼育や販売目的で捕まえたり、近年は「鷹カフェ」が増えたりしていることが捕獲数を増やしている。一般の人が普段見られない猛禽類に親しむことは悪いことではないが、数のすくない種を展示することはやはり避けたい。

イヌワシ
イヌワシ
クマタカ
クマタカ
ノスリ
ノスリ
   エゾフクロウ
イヌワシの大きな鉤爪

大事なのはやっぱり住んでいるところ

いずれにせよ、これら三種の鳥たちの生息数を把握したり、安定して繁殖できるようにしたりすることは容易なことではない。また。安易に飼育して増やそうなどとすると、トキの例でも分かるとおり大変な費用と時間がかかるのでそれは無理な話だ。だからこそ、自然環境の保全が大切になってくる。例えば、イヌワシなら山岳地域であり、クマタカなら森が必要で、オオタカは山地や丘陵地、そして平野にもいる。それぞれの地域に適当な数のエサがいて、繁殖しやすい環境が維持されていなければならない。イヌワシならウサギやヘビが数多くいて、巣を作れる高くて丈夫な木が必要になってくる。裏を返せば、イヌワシのいる山は自然環境が良い状態に保たれているといえる。

エゾフクロウ
エゾフクロウ

オオタカの保護

ところで、今、国や保護団体、個人がその保護について議論しているのが、オオタカだ。

現在、イヌワシ、クマタカ、オオタカの三種は、国内希少野生動植物種に指定され国が保護している。なぜこの指定が重要になってくるかといえば、つぎのような決まりがあるからだ。
「イヌワシ、クマタカ、オオタカの三種については、開発行為を行う場合、環境評価法に基づいてその生息地の環境や生息数などを調査・評価しなければならない。」
つまり、宅地やゴルフ場などを作るための開発を三種の鳥の暮らしている場所で行う場合、必ず生息数や環境が損なわれないようにしなければならないのだ。また、環境大臣は、これら開発業者に対して、必要に応じて助言や指導を行うことができる。具体的には次のような場合だ。

生息地等保護区は全国に9か所。

1. 建物等の新築、改築、増築。
2. 宅地開発のための土地の形質の変更。
3. 鉱物の採掘、土石の採取。
4. 水面の埋め立て、干拓。
5. 河川・湖沼等の水位や水量の変更。
6. 木竹の伐採。
以上の行為を保護区内で行う場合は、環境大臣の許可が必要になる。
  ワシミミズク
ワシミミズク

ところが、オオタカについては、保護区は存在しない。そして、近年数が安定したとの見方から指定を解除しようという動きがあるのだ。

どのくらいいるのか、繁殖は大丈夫?

さて、オオタカは日本のどこにいるのか?国や保護団体がまとめた調査結果では、一応北海道から九州まで生息しているはずだが、西日本ではごくわずかな目撃例しかない、そのため東日本を中心に分布している。その数は2008年の時点で5,000から8,000羽とされている。ところで、その数は年々変化している。1970年代後半にオオタカの違法捕獲・密猟が横行し、飼育や譲渡、輸出入が厳しく制限される「特殊鳥類」に1983年に指定された。そのかいあってか、90年代には繁殖数がいったん増えたものの、2000年代には頭打ちになり、その後は減りつつある。ところで、近年になってオオタカが都市の近くで観察されるケースが出ている。

オオコノハズク
オオコノハズク

なんとか適応したものの

都市の近くで暮らすオオタカは何を食べているのか。ドバトやゴイサギなどのサギ類、そしてカモ類などだ。ドバトは多くいるからまだいいとして、サギ類は何を食べているかというと川や農水路などにいるザリガニや小魚だ。カモ類も同じ環境で繁茂する水草を食べている。というわけで、オオタカにとっても川や農水路がないと困ったことになる。では、都市近郊のオオタカはどこで繁殖しているのだろう。それは河川敷にある林だ。でも、こうした河畔林は台風や大雨などの影響をもろに受けやすく不安定な自然環境といえる。オオタカのひなが育ってちょうど飛べるようになった時期に台風や大雨のシーズンになるため巣立ちに厳しい状況が待ち受けているのだ。

近年オオタカは、都市近郊でも見られるが、その生息環境は安定していないため、決して喜ばしいことではない。
 近年オオタカは、都市近郊でも見られるが、その生息環境は安定していないため、決して喜ばしいことではない。
オオタカ
オオタカ


オオワシ
オオワシ
 オオワシは冬になるとロシア東部から北海道にやってくる。サケやタラなどの魚類を主に食べる。

オオタカを守ると自然にやさしい

イヌワシやクマタカと違ってオオタカは山と平地の両方をねぐらにしている。平地の林には様々な野鳥のほか、渡り鳥もやってくるし、ウサギやタヌキ、キツネなどのほ乳動物も場合によっては生息している。要するに多様な生き物がいる自然が保たれているのだ。というわけで、オオタカを守るとまるごと自然の多様性を維持することにつながるため、特に重要な鳥だといえる。ただ、現状ではオオタカの捕獲、殺傷、営巣木の伐採がなければ種の保存法によって罰されることはないため、生息地とその周辺の自然を維持するという発想はない。そして、こうした状況のまま、ただ数がそれなりに増えたからというだけで指定解除をしてしまうと安易な開発につながり、それまで保たれていた自然が崩されてしまうと、保護団体は懸念している。一つの種とその生息環境は一体化していて、部分として存在しているのではないのだ。



猛禽類がいなくなると

オオタカはヒヨドリやムクドリ、さらにはカラスも捕らえて食べる。こうした鳥たちは増えすぎると農業被害を起こすほか、糞や鳴き声などで人間の居住地域にも悪影響を及ぼす。つまり、オオタカやほかの猛禽類はこのような鳥たちの数の抑制に一役買っているのだ。一方、ムクドリやヒヨドリを人の手で駆除しようとすると、費用の割に効果は限定的だ。一例を挙げれば、電線や街路樹にとまったこれらの鳥を音で脅かす方法がある。しかし、時間とともにこの音にも慣れてしまって驚かなくなってしまう。歩道や美しい街路樹がうんちまみれという由々しき事態に陥るのだ。とはいえ、こうした被害も鳥たちの生息地が開発によって減ってしまったことが本当の原因だ。ムクドリは本来平地の林や河畔林にいたのだし、ヒヨドリは最近めっきり減ってしまった里山を棲み処としていた。

オオタカの明日は私たちの未来

オオタカが暮らせる環境は私たちにとっても住みやすいといえる。オオタカだけでなくミサゴ、ハチクマ(蜂が主食)、サシバ(小動物や昆虫を食べる)など多くの猛禽類がそれぞれ大切な役割をもって働いている。大切なことは、本当に必要な開発なのか真剣に考えること、そして最も今必要とされているのはこうした生き物たちに関心を持つことだ。生き物は日本全体の財産であり、それはいったん失われると取り戻せないため未来の日本人の財産を奪ってしまうことになるのだ。