トカゲ太郎のワンダー・ワールド 滋賀県立琵琶湖博物館


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- 目次 -

特集記事 4

2013年2月26日、不思議な形の小さないきものたち。

特集記事 3

2008年9月6日、学芸員の秋山廣光さんと臼井学さんに、外来魚のこと、川のことについてお話をうかがいました。

特集記事 2

2008年7月16日、学芸員の楠岡さんに、プランクトンについてお話をうかがいました。

特集記事 1

2007年12月12日、学芸員の楠岡さんに、博物館の中を案内していただきました。

 


(訪問日 2013年2月26日)


不思議な形の小さないきものたち

カイミジンコは、エビやカニと同じ固い殻をもつ甲殻類だ。水中に暮らしていて大きさはふつう0.3mmから5mmぐらいだ。身体のつくりは二枚貝によく似ていて、柔らかい身体を固い殻で守っている。体色は緑、黄、紫とさまざまだ。海洋性のカイミジンコの化石はオルドビス紀にまでさかのぼることができ、淡水性で最も古い化石は石炭紀のものだ。現在生きているカイミジンコは約8000種、化石種も含めると約33000種もいる。



2012年12月22日~2013年3月10日 開催
ヨコエビやカイアシ類の発見も相次いだ。

よく観察すると

用語解説

新記録種とは新種ではないものの今まである地域でしか発見例がなかった生物が新たに別の地域で見つかった場合に用いられる用語。

新種は世界で初めて見つかったもの。

琵琶湖博物館の主任学芸員ロビン・ジェームス・スミスさんはカイミジンコの分類学者だ。スミスさんは同館の企画展『かわいいモンスター ミクロの世界の新発見』の展示を担当した。イギリスから来たスミスさんにとって琵琶湖とその周辺は生き物の宝庫だ。

「これまで40種のカイミジンコを見つけることができました。その中の16種がなんと新種だったんです。カイミジンコだけに限りません、これまでの調査で152種の新記録種、50種の新種が確認できました。私たちの身の回りには未発見の生き物が数多く存在するのです。」
とスミスさんは力説する。そして、発見することはそれほど難しくはないという。

ただ、見つけてもその種類を学術的に新種と決定するにはさまざまな確認作業が必要だ。まず発見した生き物と同様な種がいないか、文献や標本を見て確かめなければならない。また、他の専門家の意見を聞いたり、DNAの解析をしたりして、これまで発見された種と同じ種ではないか最終的に判断する。もちろん身体の形や色といった点を細かく見るには訓練された眼も必要になる。

眼で見ることも大事

実は、琵琶湖とその周辺では180年以上前から生き物の調査研究が進められてきた。今回見つかった種はアユやフナといった大型ではなく、体長が数ミリといった微生物が主だ。

新発見が相次いだ理由は、水田、井戸、湧き水、川の伏流水(川の近くを流れる地下水)などこれまで対象にしていなかった環境をあらたに調査したからだ。また、水底の泥や砂だけでなく水草や藻などに付着している細かい生き物も採集し、調べ上げたことも挙げられる。さらに、微生物の種類によっては日本に専門家が一人か二人しかいないという現状がある。種数も多く、非常に小さな微生物は専門家でなければ、新種と考えられる標本を採集し、文献と照らし合わせることが難しい。

   カイミジンコは小魚やミズダニなどに食べられる一方、集団でミミズなどを襲う獰猛な捕食者でもある。また、カイミジンコは固い殻のおかげで魚に食べられても約26%はうんちといっしょに生きたまま排出される。

分子生物学の発展で、生き物の分類にDNAを用いることが主流になる一方で、形態によって種を見分けるという古典的な方法をとることは少なくなってきた。身体の一部からDNAを抽出してコンピューターで解析すれば新種かどうか見分けがつくということだ。ただ、種類の違いはDNAを調べるだけでは説明のつかないこともある。その一例として形態学者であるスミスさんは地下のカイミジンコと湖のカイミジンコの例を挙げる。
カイミジンコは尾肢とよばれる突起をもっています。地下水に暮らすカイミジンコはこの突起が非常に発達しています。一方、湖のカイミジンコはそれほど大きな突起をもっていません。おそらく地下水のカイミジンコは、砂の粒子の中をかき分けながら食べ物を探したり、交尾する相手を見つけたりしなければならず、その時大きな突起が役に立つのだと考えられます。」
と、スミスさんは説明し、新種の発見とともに大切なことはその身体のつくりや形態を調べることでその種の生態を知ることにあるという。

イギリス出身のスミスさん。多様形と色彩をもつカイミジンコに魅せられてずっと研究を続けている。

洞窟を調べる

   地下水のつながりを調べることは、 さまざまな生き物の生息域を知るうえでとても重要だ。地下には湖沼や河川よりも多くの水が貯えられているという。

同博物館の上席総括学芸員マーク・ジョセフ・グライガーさんの専門は水田に暮らすカブトエビやホウネンエビなどの甲殻類。一方でグライガーさんはコウガイビルが大好きだ。コウガイビルは血を吸うヒルの仲間ではなくて、ウズムシの仲間。身体を二つに切っても再生するプラナリアがウズムシの仲間の代表だ。グライガーさんが特にコウガイビルに興味をもっている理由は、故郷のアメリカではめったに観察できないからだ。日本では湿り気のある土壌であればそれほど珍しい生き物ではない。

「そこら辺に棲んでいるから驚きます。なかには1mを超えるものもいます。」
と、興奮した様子で話すグライガーさん。コウガイビルはグライガーさんの専門ではないけれども、生き物に対するこうした幅広い関心がグライガーさんの研究の基本になっている。

琵琶湖周辺は石灰岩地帯が広がっていて洞窟が多い。グライガーさんはそうした洞窟に入っていって調査をした。暗いうえにヌルヌルしていて足場が悪い洞窟内の作業は困難だったが、その甲斐あって琵琶湖東部にある多賀町の洞窟からカイアシ類の新種が見つかった。

さまざまな自然環境で生き物を調査するグライガーさん。

まだまだ知らないことばかり

昔エビ

新種ばかりではない。昔エビなどは非常に珍しく、今回の調査でも井戸や川の伏流水、琵琶湖の浜辺などの場所から見つかっている。でも、その専門家は日本にはいないし、東アジアでは韓国に一人しかいないという。このためその生態はほとんどつかめていない状態で、日本にいる昔エビが環境の悪化などでいなくなってしまう前になんとか詳しく調べたいとグライガーさんは思っている。

カイミジンコの場合も同様で、スミスさんによればカイミジンコの種数やどのぐらいの数生息しているのかまだまだ分からないことが多いという。カイミジンコの中には水中の酸素濃度に敏感なものもいるなど、自然環境の微妙な変化をとらえる上でカイミジンコの生態や自然の中での役割を知ることは大切なことだからだ。

   楠岡さんの専門はゾウリムシやラッパムシなどのせん毛虫。ほとんど1mm以下の大きさなので普通は全く目立たないけど、拡大するととても興味深く、動く姿も面白い。

神出鬼没のクラゲ

マミズクラゲ

現在、琵琶湖博物館ではとても珍しい淡水に暮らすクラゲ、マミズクラゲを飼育している。直径が3cmほどのマミズクラゲは中国原産だが、日本にも北海道から沖縄まで広く分布している。湖沼や池に暮らしているけど、毎年決まって同じ場所に出現することが少ないため見つけることは簡単ではない。珍しいことにマミズクラゲは、オスとメスによる有性生殖と無性生殖の両方のやり方で増える。無性生殖ではポリプと呼ばれる段階を経てクラゲになる。ポリプはイソギンチャクのように水底にくっついて過ごし、分裂(出芽)して群体をつくってしばらくしてからクラゲになる。不思議なことに日本、北米、ヨーロッパでは一つの池から同じ性しか見つかっていないのに、中国では両方の性が見つかっている。長期間飼育される例は珍しく、琵琶湖博物館でその姿をよく観察できる。


 


(訪問日 2008年9月6日)


専門家に聞いてみた  -外来魚のこと、川のこと-


ブラックバス
ブラックバス

リバプレ隊の後藤さんは、活動のかたわら川の様子をよく観察する。 「最近、瀬田川の支流でコイやフナの大群が集まっているのを見てびっくりしました。 でも外来魚は見かけません」 と、あまりに多くて少し生々しい様子を写真で見せてくれた。

このことについて琵琶湖水族館の専門学芸員、秋山廣光さんは 「ブラックバス(オオクチバス)は水の流れのあまりない止水域にふつういます。 ブルーギルは遡上することもありますが中流域まででしょう。 獲物を追跡する大型のブラックバスから逃げて支流に集まったのかもしれません」 と説明する。

日本の魚の減った理由

ブルーギル
ブルーギル

在来魚はそれぞれの種で特定の食べ物を決めて棲み分けし生き延びてきた。 それに比べて外来魚は何でも食べる。 つまり柔軟に環境の変化に適応できるのだ。 加えて外来魚は卵を守ったり、稚魚がある程度育つまでともに生活するなど繁殖力にもすぐれている。 ところが在来魚はハゼのなかまなど特別な種類以外は卵や稚魚を守ることをしない。 このため、卵や稚魚が外来魚のどんどん食べられてしまう。 また、在来魚の卵が産み付けられたり、稚魚が育つヨシ群が減少していることも一因だ。 外来魚はふつう岩がゴロゴロしている場所にいるからだ。

さらに生存競争は続いている。 ブルーギルが群れでブラックバスの卵を食べるのだ。 ブルーギルのスピードについていけないブラックバスは激減している。 実際アメリカではブラックバスを減らす目的でブルーギルを放流するのだという。 こうして琵琶湖はブルーギルだらけになりつつある。

さらに問題なのはコクチバス、この魚は川を遡上するため在来魚が支流に逃げてもどこまでも追いかけていく。


外来魚は解剖しやすい

秋山廣光さん

フナなど在来魚は内臓が入り組んでいてその構造が分かりにくい。 それに比べて、外来魚は胃や腸などの臓器がはっきり分かれていて観察がしやすいのだそうだ。 しかし、殺して捨ててしまうのではやはり問題だ。 そこでたんぱくな味の外来魚をなんとか美味しく食べるためのムニエルやフライなどの調理方法がいろいろためされている。


知って欲しい魚のこと

「絶滅が心配される種がいますが、専門家のアドバイスなしに特定の種を増やしたり、放流することは絶対にやめて欲しい」 と秋山さんは警告する。 まず、放流しても生き延びられるかどうかわからないし、もっと問題なのは九州産のものと琵琶湖産のもののDNAが混ざってしまう危険性があることだ。 「生態系は何千年という時の流れをとともに安定してきたものです。 複雑なしくみをある程度解明するには時間がかかります」 という秋山さん。

最後に決して外来魚が悪いのではないことを強調していた。 「何でも食べるブルーギルの中にも砂の中の貝を食べる特徴をもったものもいます。 藻を主食とするものもいます。 単一の種でもさまざまな生態があり、知れば知るほど面白い魚なのです」




自然は手をつけないのが一番です。でもね・・・

リバプレ隊の朝田さんは高橋川の草刈と清掃をしていて困ってしまうことがある。 川の急な斜面に生えた木を刈り取りできないことだ。 「川岸と川底をコンクリートで固めた三面工法でできた川だとこういう作業は危険なんです」 と作業がうまくできないことにもどかしそうだ。

琵琶湖博物館の学芸員主査、臼井学さんは河川工学を20年以上研究している。 臼井さんに河川の工法について聞くと 「昔は確かに治水のため三面を固めていました。 しかし、今は両岸に植物が育つようなブロックを階段上に積み上げるなど自然になるべく配慮した工法を採り入れています。 それでもまだすべての河川を整備できているわけではありませんが。 市民の方々の力で川の流れの妨げになるゴミや余計な植生を取り除いていただけるのは大変助かります」 と現在の状況について語る。

ゴミの問題とともに今一番取り組まなければならない課題は河畔林に関することだ。 河畔林とは川岸に生えた樹木のことで、川の氾濫によって水に浸ってしまう (冠水という) のに生き延びて珍しい植生を保っている場所だ。 さらに大小さまざまな生き物の棲みかにもなっている。


臼井学さん


臼井さんは河畔林の中でも彦根地区を流れる犬上川の竹林の問題に取り組んできた。 竹は昔、建物や生活用品によく使われていた。 そのため竹林も住民の手でよく手入れされていた。 ところが今は使うひとも減り荒れ放題になってしまった。 うっそうとした竹林はゴミの投棄場所なったり、川の流れを妨げるなどやっかいな場所になってしまったのだ。

「治水のためには刈り取ってしまうのが一番簡単です。 でも貴重な林でもあるため環境アドバイザーに意見を聞くなどして、なるべく植生を妨げないようにしています。 今後は炭や紙、箸を作るなど竹の有効利用を考えなければいけません」 と自然環境の保全と治水のバランスに臼井さんは頭を悩ましている。


リズムが大事

琵琶湖には500本の一級河川が流れ込んでいる。 そのため自然環境にやさしい川の整備が全国でもいち早く進んでいる。 例えば魚道。 魚が堰などに妨げられず遡上できるよう人工的に川の中に魚道を設けるのだが、ふつう川の流れを優先させて川のわきに作ってしまう。 しかしこれでは水量が減ったり、逆に水量が増して激流になると魚は川をのぼれない。

「川には澪筋(みおすじ)といういつでも流れがとぎれない場所があります。 また、曲がりくねったりしている箇所では流れも変わってくるので川のリズミカルな形状を良く考えて工事は進めなければなりません。 また、魚は遡上のために澱みも必要とします」 という臼井さんは自然に細かい注意をはらいながら今も研究を進めている。

関心をもつことは人と自然を守る

目まぐるしい環境の変化の中で治水を完璧に行うことは難しい。 そうした状況でも川に関心をもって川のことを良く知ることは自然を守り、人の暮らしを守ることになるという。 「川に関わる市民活動は大変重要です。 川の氾濫などの緊急時にも普段の活動から得られて知識で適切に行動できるからです」 と臼井さんは河川に関する知識が広がっていることを喜んでいた。

 


(訪問日 2008年7月16日)


目に見えない世界

琵琶湖博物館では、小中高生を対象に無料で体験学習を行っている。 参加した生徒たちは博物館近くの湖岸でプランクトンを採集し、実習室で顕微鏡をのぞきながらプランクトンを見つける。 見つけたプランクトンは個体ごとにスケッチして、用意された種類別の写真と見比べて名前や属する仲間についてつきとめる。 その後、動物、植物それぞれのプランクトンについて博物館の職員が説明をしてくれる。

この日はアナベナやミクロキスティスなどが多く採集された。 これらの藍藻のなかまは湖や池の表面をおおう 「アオコ」 と呼ばれる現象を起こし、水質の悪化をまねく。

モニターに映っているのは体長1cmにもなる大きなミジンコのなかま、ノロだ。 小エビのような体つきで一個の複眼をもっている。 まるでオバケの 「一つ目小僧」 のようだ。

大塚泰介さん

植物プランクトン担当の学芸員大塚泰介さん。 動かないため識別しにくい植物プランクトンを特徴をしめしながら丁寧に教えてくれる。


巨大なプランクトン

ふつう 「プランクトン」 というと微小な生物のことをすぐに想いうかべるけど、実際には自ら泳ぐことができない、または泳ぐ力の弱い、水中を漂って生活している浮遊生物のことをさす。

だから小さいものは千分の一ミリメートルのピコプランクトンから大きいものは2メートルを超えるメガプランクトンまでいる。 網にひっかかって漁師さんたちを困らせるエチゼンクラゲも実はプランクトンなのだ。

ただ、微小生物のことを総称してプランクトンと一般的には呼んでいるから間違いではない。

アオコと逃げる魚


ゾウリムシは男性か? それとも女性?

プランクトン琵琶湖だけでも数千種類いると推定され、その中のわずか八百種しかリストアップされていない。 プランクトンは陸上の大型の生物と同じように光合成をする植物プランクトンと光合成をしない動物プランクトンの大きく二つに分けられる。 また色も形も大きさもさまざまだ。

太陽光の紫外線から身を守るためピンク色をしたものや食べ物によって赤くなったものまで色彩豊かな体をしている。 また、砂粒をくっつけて巣を作るものや体の回りにねばねばした粘液を出して身を守るものまで、不思議な生態に満ちている。

なかでも面白いのがゾウリムシのなかまで、性別がメスとオスだけでなくA、B、Cと複数あるものがいるという。

水辺の微生物

左がレビコレプス・ビワエ、右はミドリゾウリムシ。 レビコレプス・ビワエミジンコの死骸を食べる琵琶湖のハイエナだ。


スーパー単細胞

生命の誕生は約30億年前とされている。 現在生きているすべての生き物の元になったものが何であったかはまだ分かっていない。 今のところ、その元になった生き物からさまざまな生き物が枝分かれして進化したと推測されている。 人間やその他の大型動物とは別の進化をとげた多くの微小生物は身体が一個の細胞からなる単細胞生物。 そのため、目、鼻、耳、口と感覚器官は分かれていない。 ただ感じる能力はしっかりとあり、その証拠に光に向かって進むものやエサの臭いをかぎわけるもの、磁力を感じるものもいる。

「コンピューターの集積回路みたいなもので感覚器がひとつにまとまっているのです。 決して劣っているわけではありません」 と言葉の印象から誤解しないで欲しいと楠岡さんはいう。

湖の環境と人びとのくらしをテーマにしたC展示室内にあるプランクトンコーナーは、今年3月にリニューアルされ展示スペースが広くなった。

実際、驚くべき能力をもったプランクトンは数多くいる。例えば、不老不死のアメーバ。 ふつうアメーバは分裂を繰り返して数を増やし、分裂の限界がくると他のなかまと接合して若返る。 しかし、不老不死アメーバは分裂に限りがなく自分の完全なクローンを生み出し続けるのだ。 このほか日向ぼっこするだけで生き延びるゾウリムシがいる。 ミドリゾウリムシは、身体の中に共生藻類クロレラがいて、クロレラが光合成で作り出す有機物をミドリゾウリムシがいただき、かわりに自分の排泄するリンチッソクロレラにあげるのだ。 このおかげでエサの少ない時期でもミドリゾウリムシは平気で生き延びられる。

楠岡秦さん

主任学芸員の楠岡秦さんは今年7月、新種のせん毛虫(ゾウリムシのなかま)の発見を公表した。 楠岡さんとザルツブルグ大学のウィリヘルム・フォイスナー教授、宮城教育大学の島野智之准教授の研究チームは共同で調査を行い、2006年11月に琵琶湖博物館近くの湖岸で見つかったコレプス科のせん毛虫が新属であることをつきとめた。 そして、今年6月に国際原生生物学会の学術誌  「ジャーナル・オブ・ユーカリオティック・マイクロバイオロジー」 に論文を発表した。 新しいせん毛虫の名前はフォイスナー教授がレビコレプス・ビワエと名づけた。 レビは「滑らかな」、ビワエは「琵琶湖の」という意味。 古代湖である琵琶湖でとても古い時代に成立した種類であると考えられ、古代湖の種の分化について知る貴重な手がかりになる。

魚類や水生生物の食物となって生態系を支えるプランクトン。 一見しただけではそのすごさは分からないけど、よーくその世界をのぞくと不思議な小宇宙が広がっていてその魅力はつきない。

注: 絵の中のプランクトンは、見やすくするために、実際の比率よりも大きく描いています。

 



訪問日 2007年12月12日

古代から現代まで

滋賀県立琵琶湖博物館は琵琶湖の南東の烏丸半島にあります。 展示室は、A、B、Cと水族展示の四つに分かれていて、最初の三つの展示室では、約400万年前の古代から現在に到るまで琵琶湖の歴史をさかのぼるように様々な展示物が陳列されています。 そして最後の水族展示室では現在の琵琶湖に生きる生物を魚類の生態を中心に観察できるようになっています。


なぜ象の化石?

黄河象

動く湖

今から400万年前、現在の三重県上野盆地に琵琶湖の起源となる大山田湖が誕生した。 そして、古琵琶湖と呼ばれるその頃の湖は次第に北上を続け約40万年前に今の位置まで移動して琵琶湖をかたちづくった。 さらに現在の琵琶湖も今なお移動を続けていて将来は日本海に達することも考えられる。

さて、なぜ象かというと 約250年前~100万年前まで日本に生息していたアケボノゾウの化石が琵琶湖周辺で見つかったからだ。 真下から眺められる骨格標本は中国の黄河象の化石で、この象が小型化したものがアケボノゾウではないかと考えられている。 このほかA展示室では古琵琶湖層群の化石として魚類や貝類、植物類などの化石を展示してある。 さらにここでは恐竜のうんちやサメの歯の化石などに触ることができる。 展示交流員さんの話によると 「匂うよ、ほら」 と想像力の豊かな子供もいるそうだ。 サメの歯は見ると触るのでは大違いでギザギザ感に驚いてしまう。


小さな小さな絶滅危惧種

ビワツボカムリは1981年以来その生きた姿を見られていないプランクトン。 琵琶湖の水質の悪化がその原因? と思ったら、大間違い! 実際には1980年頃より今のほうが琵琶湖の南湖の水質は良くなっている。 その当時は南湖でビワツボカムリは見られた。 いなくなったのは残念なことだが、その本当の原因はいまだ謎なのだ。 C展示室のミクロの世界のコーナーでは、その日採れたて新鮮なプランクトンを拡大して観察できる。 また、もう一つ 「どぶ川の生き物たち」 というユニークな展示がある。 ここではどぶ川に棲む、ザリガニやミズムシ、それらのエサとなるご飯粒などが拡大模型になって再現されている。

この展示を企画した主任学芸員の楠岡泰さんは 「人の眼には汚くみえるどぶ川の環境もある生物にとっては食物の豊富な楽園です。 つまり生物によって棲みやすい環境は違うということ。 琵琶湖博物館の重要なテーマのひとつは、環境の良い悪いをすぐに決めつけず多様な環境の大切さについてよく考えて、お客さんひとりひとりにとって良い環境とは何かを考えるきっかけにして欲しいということです」 と言って、大好きなプランクトンたちがこれ以上失われないことを願っていた。

楠岡泰さん


こどもを丸呑みとまでは・・・

  ナマズ

琵琶湖博物館の目玉の一つはなんといっても日本最大のナマズ、ビワコオオナマズ。

こどもを丸呑みとはいかないけれどまじかに見ると迫力満点。 二匹のオオナマズは仲が悪くてくねくねと絡み合いながらケンカをしている様子がときどき見られる。 水族展示室は琵琶湖の浅瀬から深いところまで歩いて見てまわれるようになっている。 メスだけで繁殖できるギンブナ、ギギという音を出すナマズの仲間ギギなど珍しい習性の魚もその途中で観察できる。


思い切って触ってみ!

水族展示室のタッチングプールで子供たちと接する機会の多い展示交流員の近藤摩子さん。 ニゴロブナのヌルヌルした手触りに驚いたり、ザリガニのハサミを怖がって触れないなど年齢や性格で子供たちの反応はさまざま。 でもこの子は大丈夫と思ったら 「思い切って触ってみ! 平気だから」 と子供にザリガニを差し出すと結構喜んでくれるのだそうだ。

近藤さんは 「わたしたちが手助けして生き物にじかに触れてもらえるととてもうれしい」 と笑顔で語ってくれた。

近藤摩子さん


けっこうデリケートです

  岡田隆さん

ヘラチョウザメやガーパイクなどの古代魚が泳ぐ巨大水槽。 そこで魚たちにエサを与えている飼育員の岡田隆さん。 「ヘラチョウザメはとてもデリケートな魚なんですよ。 日ごろからよく観察しているとなんらかの原因で痩せてやつれてしまう個体もいます」 と飼育の難しさを話してくれた。 

ちなみにプランクトンを培養するのは難しいため、ここでは粉状のエサを与えている。 大口を開けてエサをほお張るヘラチョウザメの姿は大自然の中でプランクトンを食べている本来の姿を思い浮かばせる。

一方、同居しているチョウザメは、口が下についていて泥の中の貝やミミズを食べている。 チョウザメとヘラチョウザメ、名前は似ているけど形が違うからよく見てみよう。


人々にとっての琵琶湖

B展示室では、伝統的な輸送船であった丸子舟や古民家を復元するなど臨場感たっぷりの展示物で琵琶湖とともに暮らしてきた人々の歴史をたどることができる。

たる型のお風呂

しっかり閉まって暖かいのはいいのですが、出入りにプライバシーの問題が発生します。 このたる型のお風呂は、『おけ風呂』と呼ばれている。 今でも一軒だけこのお風呂を使っている家があるそうだ。

多様性を育む

琵琶湖には固有の十五種を含む五十種の魚類が生息している。 しかし、ブルーギルやブラックバスなどの外来魚の被害や水温の変化などで多くの魚たちがその数を減らしつつある。 そこで琵琶湖博物館では保護増殖センターで日本国内で絶滅の危機にある淡水魚の繁殖と自然復帰の研究を行っている。


どんどん聞いてみよう

琵琶湖博物館では地学、生物学、物理学などそれぞれ専門の学芸員さんが定期的に講習会を開催しているほか、展示交流員さんが展示物についていろいろなことを教えてくれる。 今回も詳しい説明を聞けて学んだことがいっぱいありました。
ご協力ありがとうございました。