トカゲ太郎のワンダー・ワールド
恐竜のまだいない大昔
生き物たちはすでに大繁栄していた
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先カンブリア代から古生代ペルム紀まで

  トカゲ太郎 トカゲ太郎

地球上にはじめて現れた生き物

Tribrachidium
Tribrachidium sp.
おそらく棘皮(きょくひ)動物 または刺胞動物   
原生代後期(先カンブリア時代末)
発掘地:オーストラリア南部


Charniodiscus arboreus
Charniodiscus arboreus
おそらく刺胞動物
 原生代後期(先カンブリア時代末)
発掘地:オーストラリア南部

地球上に生き物が現れたのはいつなのだろう? 今のところ化石などのさまざまなデータから推測すると、約35億万年前と一般的に考えられている。 ただ、地球上に海が形成された約40億年前とほぼ同時期に生物が誕生した、と考える人もいる。 なかでも注目されているのはオーストラリア北部にあるピルバラ層と呼ばれる地層の岩だ。 海中に生息していた微生物が化石として確認されており、これが今のところ世界で最初の生物だと考えられている。 一方、グリーンランド沖に浮かぶ島、アキリア島にはもっと古い38億年前の地層がある。 この地層を分析した科学者や考古学者たちは、生命体のこん跡となるものが確認できる、と発表している。

Possible Jellyfish
Mawsonites spriggi
おそらくクラゲの仲間
原生代後期(先カンブリア時代末) 
発掘地:オーストラリア南部

それから時代は進み、約25億年前になると地球の大気に劇的な変化をもたらした“光合成”をする生命体が現れる。 その生物が発見されたのはオーストラリア西部のフォーテスキュー頁岩(けつがん)だ。 この酸素を作り出す最初の生物は青緑色をした藍藻(らんそう)の仲間で、シアノバクテリアと呼ばれる。 このシアノバクテリアなどの行う光合成によって、この時からゆっくりと時間をかけて地球上全体に酸素が蓄積されていった。 この革命的な地球環境の変化は、地球の大酸化事変とか大酸化イベント(Great oxidation Event)などと呼ばれている。 光合成をする微生物や植物はその後数百万年かけてさまざまに進化し多様化して、海から陸へと生息環境を広げていった。 その結果、地球上の酸素濃度はさらに高くなり、逆に二酸化炭素の濃度は低くなっていった。

約12億年前になると、多細胞生物が登場する。 Bongiomorpha pubescensという紅藻が今のところ世界で最初の多細胞生物の1つだとされており、その化石はカナダの北極圏で発掘された。

さらに約6億年前まで時代が進むと、発見される化石の数が急激に増える。 その多くの生物は殻や硬い外骨格(甲羅など)をもっていて、現代の生き物に似た形のものも多い。 そして先カンブリア時代(冥王代、始生代、原生代)から古生代の幕開けとなるカンブリア紀へと時代は移る。



地質年表
カンブリア紀 (5億4200万~4億8800万年前)
オルドビス紀 (4億8800万~4億4400万年前)
シルル紀 (4億4400万~4億1600万年前)
デボン紀 (4億1600万~3億5900万年前)
石炭紀 (3億5900万~2億9900万年前)
ベルム紀 (2億9900万~2億5100万年前)
(年代は米国国立スミソニアン自然史博物館を参照している)


身体の形がそのまま残った摩訶不思議な生き物たち

カンブリア紀(5億4200万~4億8800万年前)

カンブリア紀の生き物たち
A アノマロカリス F ネクトカリス
B ハルキゲニア G  アーケオキアタ
C ウィワクシア H エルドニア
D オパビニア I ピカイア
E  三葉虫(オレノイデス)

この時代、化石となってその存在が確認できる生物の数が海の中でいっきに増えた。 先カンブリア代(カンブリア紀以前)の地層の中には比較的わずかな生物の化石しか見つからないのに、カンブリア紀の地層からは爆発的に多くの化石が見つかるのだ。 そこで、この現象をカンブリア爆発、またはカンブリア大爆発と呼んでいる。 生き物たちはその身体の基本的な構造さえも短い期間に見事に多様化させていったようだ。 その中には硬い殻や外骨格を形成したものも多い。 このような身体を持つことにより、動物たちの中には、天敵に対してより堅固な身体をもったものや、身体を巨大化させたもの、また身体の形を多様化させたもの、さらにより柔軟な動きをできるようになったものが現れた。 一例としてこの時代の最も大きな動物の一つ、アノマロカリスがいる。 アノマロカリスの身体は流線型だったので、水中をすばやく移動することができた。 またギザギザとしたノコギリ状の歯は、三葉虫などの節足動物の硬い殻を噛み砕くことができた。

Helicoplacus
Helicoplacus 棘皮動物
カンブリア紀初期、発掘地不明
Anomalocaris
Anomalocaris canadensis アノマロカリス
カンブリア紀中期
発掘地:カナダ、ブリティッシュコロンビア州

バージェス頁岩(けつがん) - それぞれに進化した生き物たち

Opabinia
Opabinia regalis オパビニア
カンブリア紀中期
発掘地:カナダ、ブリティッシュコロンビア州


Hallucigenia
Hallucigenia ハルシゲニア
カンブリア紀中期
発掘地:カナダ、ブリティッシュコロンビア州


Cambrian fossil assemblage
複数の動物たち
カンブリア紀中期
発掘地:カナダ、ブリティッシュコロンビア州

チャールズ・ウォルコット(1850-1927)は米国人の地質学者。 彼は、1909年、カナダのブリティッシュコロンビア州にある地層でカンブリア紀の化石群を発見した。 これが有名なバージェス頁岩動物群だ。 この頁岩からは主にカンブリア紀中期の生き物の化石が出土する。 ふつう化石としてその痕跡をとどめるのは生物の身体の硬い部分だけだが、バージェス頁岩では柔らかい組織も鮮明な化石になって残っている。 これまでのところ、節足動物と軟体動物を合わせて約65,000以上の化石が発掘され、今も研究が続けられている。

Wiwaxia

Wiwaxia ウィワクシア
カンブリア紀中期
発掘地:カナダ、ブリティッシュコロンビア州


トカゲ太郎
トカゲ太郎

『ワンダフルライフ - バージェス頁岩と生物進化の物語』は、1989年に考古学者のスティーヴン・ジェイ・グルードによって書かれた名著。

『ワンダフルライフ - バージェス頁岩と生物進化の物語』カンブリア紀の生物の進化を探るとともに、バージェス頁岩の発見と化石の採取、発掘、研究室での分析、研究にいたるまでがわかりやすく解説している。 また化石のスケッチや化石を元に描かれた動物たちのスケッチも収録。



カンブリア紀以後さらに生き物は多様化した

オルドビス紀(4億8800万~4億4400万年前)

Urasterelia grandls
Urasterelia grandls ヒトデ
オルドビス紀
発掘地:オハイオ州ウェインズビル

棘皮動物が急激に進化し、その形も多様化していった。 中でもウミユリの仲間は多様化し数も豊富だった。

Cumingsoceras elrodi
Cumingsoceras elrodi 頭足類
発掘地:インディアナ州
Anomalocrinus
Anomalocrinus dumalis
ウミユリ
発掘地:オハイオ州マロウ


シルル紀(4億4400万~4億1600万年前)

Halysiters catenularia
Halysiters catenularia サンゴの仲間
発掘地:アイオワ州

この頃、海にはウミサソリと呼ばれる巨大な捕食動物がいた。 その繁栄ぶりを示すように多くのウミサソリの仲間の化石がこれまで発掘され、最大のものは長さがなんと2.5mもある。 一方、エサとなる無顎類(アゴのないサカナ)や節足動物は身体の柔らかい部分を守るため殻や鎧のような外骨格をもって対抗した。 だけどウミサソリはそのような生き物でもハサミやクギのようなとがった突起物で、エサをつかみ、突き刺して食べていた。



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Eurypterus remipes
Eurypterus remipes ウミサソリ
シルル紀中期
発掘地:ニューヨーク州


デボン紀(4億1600万~3億5900万年前)

板皮類(ばんぴるい)は、自然史において最初に脊椎とアゴを持った魚の1つだ。 この種のなかでおそらく最も有名なのはダンクルオステウス。 この頃の海の中で最も大きな生き物と推測されている。 これまでに発掘された化石の中で最大のものは、長さが7.5mもある。頭足類(イカ、タコ、オウムガイ、コウモリダコ、アンモナイトなど)のほかサメをふくむ魚類も板皮類の獲物となっていた。




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ダンクルオステウスについてもっと知ろう。
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Dunkleosteus

ダンクルオステウス


三葉虫ってなんだ?

Asphus
Asphus
オルドビス紀
発掘地:ロシア、サンクトペテルブルク


三葉虫は節足動物だ。 現代のエビ、カニ、サソリ、クモ、昆虫などがこの仲間にふくまれる。 ほとんどの節足動物の身体は硬い甲羅で覆われていて、頭や脚などの分かれ目は節(ふし)でつながっている。 三葉虫は現代の節足動物と同じく、脱皮することで身体が成長する。 このため三葉虫の化石が多く産出するのはその脱皮した殻が残ったからだ。 化石から推定すると、三葉虫は5億2600万~2億5000万年前の長い期間、海の中で生き延びた。 このおよそ2億7000万年の間に、三葉虫は約17,000種にもおよぶ多様化をとげ、世界中に生息地を広げていった。 これだけの大繁栄を可能にしたのは身体の形だけではなく、その生態的な行動をも新しい生息環境に合わせて変化させていったからだ。

Phacops rana
Phacops rana
デボン紀中期
発掘地:カナダ、オンタリオ州


ほとんどの三葉虫は海の底にたまった泥や砂に潜るようにして生きていた。 主なエサは泥の中を這うようにして生きている蠕虫(ぜんちゅう)や無脊椎動物だ。

Cheirurus ingricus
Cheirurus ingricus
オルドビス紀中期
発掘地:ロシア

三葉虫という名前は、その背板が中央の中葉、そして左右の側葉に分かれているように見えることから名づけられた。 しかし、解剖学的にみると頭部、胸部、尾部の3つの部分に分かれている。 ほとんどの種類の大きさは3~10cmほど。 ただ体長約72cmもある大きなものも見つかっている。 この化石はカナダ、マニトバ州チャーチル市のハドソン湾岸で1999年に発見された。 発掘された化石は、マニトバ州ウィニペグ市のマニトバ博物館に展示されている。 2009年には、ポルトガルの北部アロウカで何千もの群れの化石が発見された。 これらの三葉虫はおよそ4億6500万年前のものだ。 その中で最大のものはなんと約90cmもあるようだ。

ふつう三葉虫には頭部に1対の触覚と眼がある。 眼はトンボやチョウのような複眼(たくさんの個眼が集まってひとつになっている眼)だ。 ただ、三葉虫の眼は生息していた環境と生活様式によってさまざまな構造をしている。 海底の堆積物の中で生きる三葉虫は細長い軸の上に眼が付いており、眼を泥の上に突き出して周りの様子を覗き見ていた。 水中を泳ぎまわっていた種類の三葉虫の眼は比較的大きかった。 きっと周囲を三次元で見ることができたのだろう。 また眼がとても小さいもの、さらには眼がついているもののほとんど盲目な種類もいた。 三葉虫の身を守る手段は、身体を現代のダンゴムシのようにグルっと丸めることだ。 身体を丸めることで鋭いとげが突き出し、敵は三葉虫を襲ったり食べたりしにくくなる。 そして敵が過ぎ去っていくのをじっと待つのだ。

三葉虫の繁栄と絶滅

Koneprussia
Koneprussia
デボン紀
発掘地:モロッコ

三葉虫がはじめにその種類と数を劇的に増やしていったのはカンブリア紀のことだ。 しかしカンブリア紀末、自然環境の急激な変化によって起きた生物の大量絶滅でその種類や数は激減した。 それでも、その後生き残った三葉虫たちは新しい環境に適応し再びその種類と数を増やしていった。 しかし、オルドビス紀末に再び起こった生物の大量絶滅の打撃を受け、またまた多くの種類と数を失うことになる。 その後のシルル紀以降、またしても復活をとげた三葉虫は新しい環境に適応し、子孫を残し続けたもののカンブリア紀のように大繁栄することはもうなかった。   そしてペルム紀末期に起こった大量絶滅(2億5100万年前)の少し前、ついに三葉虫たちは完全に絶滅してしまったようだ。

Drotops armatus
Drotops armatus
デボン紀
発掘地:モロッコ


海に咲くユリの花の群生?よく見るとこれはウミユリ

Platycrinus symmetricus
Platycrinus symmetricus
石炭紀
発掘地:インディアナ州


Scyphocrinites
Scyphocrinites
シルル紀後期
発掘地:モロッコ、エルフィード

オルドビス紀にその身体の形を驚くほど多様化させていったウミユリは、現代の花のように見える。 だけどウミユリは植物ではなく海の中に生息していた動物だ。 ろ過機能をもっている筒状の足と多孔性(身体に多くの穴が開いている)で強固な身体の構造をもつ棘皮(きょくひ)動物と呼ばれるもので、現代のヒトデやウニ、ナマコなども棘皮動物の仲間だ。

花のように開いている先端部分は、水のなかを漂うエサや有機物の粒子などをこし取るフィルターだ。 興味深いことに、それぞれのウミユリが異なる長さの茎を伸ばすことで、エサを同じ場所で取り合うことを避けていたらしい。 茎の下部は岩や海底をしっかりつかみ、それがまるで植物の根のように見える。 ウミユリは互いに上手に空間を譲り合いながら、大きく群生することもあった。

Agaricocrinus splendens
Agaricocrinus splendens
石炭紀
発掘地:インディアナ州
Macrocrinus mundulus
Macrocrinus mundulus, Schytalocrinus hamiltonensis
石炭紀
発掘地:インディアナ州


突然みんないなくなった - ペルム紀末、史上最大の大量絶滅

古生代の最後ペルム紀末(2億5200万年前)、大量絶滅が再び起こった。 この大量絶滅は、地球の生物史上最大の大絶滅だ。 なんと、95%にものぼる海洋生物と70%の陸上生物が突然その姿を消したのだ。

三葉虫やブラストイドと呼ばれる棘皮動物、ダンクルオステウスなどの板皮類は完全に絶滅した。 また、アンモナイトのほか、サメや一部の魚類、ウミユリなどは生き残ったものの、その種類や数を劇的に減らすことになった。

2億5200万年前の大量絶滅、いったい何が起きたの?

なぜ大量絶滅が起きたのか、はっきりとは誰もわからない。 しかし、科学者たちは複数の自然現象が重なって起きたのではないかと推測している。

まず、巨大な隕石が落ちたことが考えられる。隕石落下による衝撃が地球上の大気や海洋の水質などを変えてしまったのかもしれない。

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 Dunkleosteus

また、海の水温が上昇したことも考えられる。 そうなると海流の動きが鈍くなり、海全体が酸欠状態に陥った可能性もある。

現在考えられる大量絶滅の原因として一番可能性が高いのは、火山活動である。 火山から噴出した火山灰により温室効果がおき、地球全体の気温が上がった。 実際、2億6000万年前に、100万立方キロメートルの溶岩と、有毒な硫黄を大量に空中に放出した火山の大爆発の形跡を確認したとする研究者もいる。

しかし、生き物は再び奇跡の復活をとげる。 その後2000~3000万年かけて、生き延びた海洋生物はその種類や数をゆっくり増やしていったのだ。 いよいよ中生代の始まり、三畳紀の幕開けだ。そしてついに 恐竜たちの時代 がやってくる。



掲載した写真は、米国国立スミソニアン自然史博物館にて撮影しました。