トカゲ太郎のワンダー・ワールド
2008 国際カエル年
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- 目次 -

特集記事 その1  上野動物園での取り組み
特集記事 その2  多摩動物公園での取り組み
特集記事 その3  井の頭自然文化園での取り組み


訪問日 2008年2月8日 

特集記事!! その1

上野動物園の取り組み

知らなかったぁ、 2008年は国際カエル年!

国際自然保護連合と世界動物園水族館協会は、地球規模でその数を急速に減らしつつある両生類を救うため、アンフィビアン・アーク計画(両生類の箱舟)を世界中の動物園や水族館の協力を得て進めている。 その一環として今年を国際カエル年とし、特にカエルの保護に力をいれることになった。

東京の財団法人東京動物園協会の4園(恩賜上野動物園、多摩動物園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園)もこの活動に参加。 カエルを中心とする両生類の調査・保全と両生類についての理解を広める活動を展開する。

今回は上野動物園で進められている取り組みについてお話をお聞きした。

シュレーゲルアオガエル
シュレーゲルアオガエル


ヤドクガエル
ヤドクガエル

その前になんでカエルなの?

そもそもカエルを特に保護の中心とした理由は、カエルツボカビだ。 このカビは両生類全部に付着するが発症して死にいたるのは今のところカエルの種類のみ。 ちなみに人間には影響はない。

ダルマガエル
ダルマガエル

地域としてはオーストラリアやニュージーランド、南米で猛威をふるい、オーストラリアでは既に8種類の固有種が絶滅。 世界中で約170種のカエルがこれまでこのカビによって絶滅にいたっている。

日本でこのカビが見つかったのは2006年12月。 飼育下のカエルからで、今のところ屋外では発見されていない。 日本ではびこらせないためにも飼っているカエルを清潔に保ち、飼育ケースなどはよく消毒することだ。 そして絶対にカエルの死骸を外に埋めないこと。 日本の固有種を守るためにもぜひ気をつけて欲しい。

トウキョウダルマガエル
トウキョウダルマガエル

そこらへんにいたのに

現在、上野動物園で飼育されている両生類は50種類。 そのほとんどが外国産の珍しいカエルやイモリなどだ。 しかし、今回保護の対象となったのは日本の固有種。 言ってしまえばそこらへんにいると考えられていたから動物園の守備範囲から大きくはずれていた。

アマガエル
アマガエル

そのため保全チームはまず捕獲することからはじめた。 対象となったのは東京の固有種で近年急速に数を減らしつつあるトウキョウダルマガエルトウキョウサンショウウオだ。

まず、昨年五月、多摩川上流の五日市でオタマジャクシを採集。 なぜオタマジャクシかというと、卵だとつながっているため遺伝子が近すぎるし、成体を捕まえるには、ピョンピョン跳ね回って一苦労だからだ。


しかし、館内で飼育して繁殖させるにはまだまだわからないことだらけ。

高橋さんとトウキョウダルマガエル
トウキョウダルマガエルについて説明してくださる高橋さん。
斉藤さん
    両生類や爬虫類のエサになるフタホシコオロギが6万匹、この部屋で飼われている。

「いったいどのくらいのスペースが一組のつがいに必要なのかわかりません。 狭いと仲間どおしで傷つけあって繁殖どころではないし、かといって広すぎても館内の飼育スペースは限られています」 とチームを率いる爬虫類館飼育展示係長・高橋英之さんは繁殖の難しさを語る。

飼育するだけでも注意が必要だと話すのは飼育展示課の斉藤祐輔さん。 「アカガエルの仲間であるトウキョウダルマガエルはジャンプ力がすごいのです。 でもガラスは認識できない。 だから、ときどき激突して口元や胸などを自分で傷つけてしまいます」 という斉藤さんは、あまり動かずスペースをそれほど必要としないウーパールーパーカスミサンショウウオなどとの飼育の違いを指摘する。

繁殖の決め手はいつ冬眠させるかによって決まる。 そのため飼育下で温度や湿度をうまく調節する必要がある。 「繁殖のスイッチを押せるのは両生類を飼育する醍醐味でもあるんですよ」 と斉藤さんは生き生きとした表情で話す。

「飼育し繁殖を安定したものにするにはトウキョウダルマガエルの場合、6年ぐらいはかかるでしょう」 と計画について慎重な高橋さんだが、将来はノウハウを磨いてカジカガエルタゴガエルにも挑戦したいと意欲的だ。

少しでも多くの種類の日本固有のカエルをツボカビから守るため、飼育・研究がこれからも進められていく。

ヤマアカガエル
ヤマアカガエル


斉藤さんによるオオサンショウウオのエサやり
オオサンショウウオのエサやりをする斉藤さん。 キーパーズトークは大人気だ。

無表情?

なぜ両生類が絶滅したら困るのか、その答えは単純なものではない。 ヌルヌルとした皮ふを見てキモイという人も少なくないのが現状だ。

「キモイでもいいんです。 だって関心があるからキモイと感じるんですよ」 と話す高橋さんは、まず無関心な人に興味をもってもらいたいと考えている。

子供の頃からカエルが好きで飼っていた斉藤さんは、「犬や猫がカワイイという感覚とはちょっと違います。 身体は小さくても、生きるために一生懸命エサを食べたり、命をつなげるため小さな卵を産んだりする。 そういう姿を細かい飼育の作業の中で観察できることが面白い」 と、自らがが感じている両生類のすばらしさを素直に表現する。

「ゾウはカワイイですか? そうかもしれませんね。 哺乳類だから表情や感情がわかりやすい。 それに比べて両生類は何を考えているのかわからない。 でも、わからない両生類の生態を知ることは本当に楽しいですよ」 と、子供のような表情で話す高橋さん。 都立高校などで講演をする高橋さんは伝えることの難しさを感じながらも両生類の不思議な魅力を多くの人に知ってもらいたいという。

両生類の魅力

オタマジャクシがカエルになる。 身体の形が成長すると変わる変態のしくみは両生類の特徴のひとつ。 また、足を一本失ってもしばらくすると新しい足がはえてくる再生能力にも驚かされる。 さらに、カエルの仲間には蛍光色のような鮮やかな色彩をもっているものもいて見るひとを惹きつける。

サンショウウオなどの飼育室を見せてくれた斉藤さんは、「ウーパールーパーは共食いします。 だから仲間に餌と間違って咬まれ足が欠けたりするんですけど、元通りになりますかからね」 と実際に再生する様子をいつも見ている。

クロサンショウウオ
クロサンショウウオ
ウーパールーパーは暑さに弱く、室温を20度ぐらいに保つ必要がある。

「両生類は進化の過程を知る生きた教材です。 子供たちにとって恐竜の魅力は両生類がいるから増すのです」 という高橋さん。 まだまだ両生類の魅力は尽きないようだ。

開発の犠牲に・・・
都市開発の影で、両生類が繁殖できる環境が失われつつある。


よーく見ているとなんとなくトウキョウダルマガエルも物思いにふけっているように思えるから不思議だ。
高橋さん、斉藤さんご協力ありがとうございました。

 


訪問日 2008年3月4日

特集記事!! その2

多摩動物公園の取り組み

世界がカエルに注目

2008年国際カエル年(1)に参加している多摩動物公園は、ツボカビの情報確認や検疫など飼育上のルール作り、飼育技術といった事柄を参加している他の動物園どうしで共有できるよう調整役を担っている。 他園との調整役を務める飼育展示課野生生物保全センター長 冨岡 恭正さんは、昨年8月下旬ハンガリーで行われたIUCN(国際自然保護連合)の専門家会議に出席した。

冨岡さんとカエルマップ、多摩動物公園

「会議の全体の雰囲気は和やかでしたが、カエルを中心に両生類が危機的な状況にあることを参加者全員が厳しく認識していました」 と話し、地元固有種の保護の大切さを少しでも多くの人に知ってもらいたい、と言う。

このため冨岡さんは 『東京でカエルをみつけたよ MAP』 を作り、他の動物園にも同じ地図を展示した。 これは身近でカエルを見つけた人にその場所を東京都の地図上に印をつけてもらうものだ。 冨岡さんは

「地図を見てカエルのことを頭に思い浮かべてもらうだけでも良いんです。 東京は広いので場所によって固有のカエルがいることもわかってもらえます」

と話し、思っていた以上の反響に嬉しそうだ。

しっかり育てて増やすために

トカゲ太郎

多摩動物公園は、東京都内でも自然が豊かに残る多摩地区にある。 多摩動物公園2008年国際カエル年の取り組みとして保護に力を入れているのがヤマアカガエル。 園内に数多く生息しているため採ってくるにはそれほど問題ない。 しかし、保護となると話は別だ。

まず獣医師が固体ごとにツボカビ症にかかっていないか診断し、その後一定期間薬浴をして全身消毒をする。 外部からカエルと交わらないよう、隔離することも大事だ。 今のところ、まだ繁殖が進んでおらず、個体数が少ないため一般に公開はしていない。

カエルが冬眠しているバケツ、多摩動物公園
このバケツの中で、
ヤマアカガエルが冬眠しているらしい。
半分起きているヤマアカガエル、多摩動物公園
牧村さんが葉っぱをよけてくれたよ。 
下から出てきたのは・・・
眠気まなこでも半分起きているヤマアカガエルだ。


死んでいません

  牧村さんとヤマアカガエル、多摩動物公園

ヤマアカガエルの5匹の成体と数匹の幼体の飼育を担当している牧村さよ子さん。 一見したら汚い水溜りのような園内の池について聞くと、

ヤマアカガエルが夜中に卵を産みに来て、今はオタマジャクシになって藻を食べながら順調に育っています」

という牧村さんにとっても、ヤマアカガエルの生態はまだはっきりとしていないようだ。

「成体には去年の12月半ばからエサを与えず、冬眠にはいりました。 冬眠中は時折もぞもぞするだけで、まったく動きません」

と不思議そうにその様子を説明してくれた。


園内にある澱んだ池、多摩動物公園
多摩動物公園内にある人口池。 
濁った汚い池に見えるけど・・・
トカゲ太郎 よく見ると、ヤマアカガエルのオタマジャクシが・・・、多摩動物公園
よく見ると、ヤマアカガエルの小さなオタマジャクシが
たくさん泳いでいた。


食べる方も困っています。

  渡辺さんとタガメ、多摩動物公園

トキサギコウノトリなど水辺の鳥にとってカエルは大好物。もちろん鳥類だけでなく、もっと小さな水生昆虫にとってもカエルは貴重なエサだ。 でも近年この水生昆虫たちも姿を消しつつある。 なかでもタガメは水田の減少や農薬の影響で全国的にその数を急速に減らしつつある。 既に東京、神奈川ではほぼ絶滅し関東では栃木に比較的多く生息しているにすぎない。

多摩動物公園では、ゲンゴロウミズカマキリタガメなどの水生昆虫も飼育・繁殖している。

飼育員の渡辺良平さんは中でもタガメの繁殖に力をいれている。

繁殖のために夏場の日調に保たれた飼育室にはタガメの幼体から成体が飼われている。 肉食性が強く、共食いを防ぐためそれぞれ別の容器に入れられている。

渡辺さんによるとタガメカエルオタマジャクシだけではなく、小エビやメダカなどいろいろ食べる、という。 しかし固体によっては好き嫌いも激しいというから面白い。 ただ、もともと水の中に棲む生物なのに、気をつけないと食後に身体が重たくなって水底に沈んで呼吸困難で溺れ死ぬものもいるそうだ。

タガメとコエビ、多摩動物公園
このタガメの好物は、
コエビなのかな?

渡辺さんにカエルとの関係について聞くと、タガメの絶滅が人間にとって深刻な影響を与えるかどうか、まだわからないとしながらも、
「田んぼの生態系の頂点にいるタガメですけど、カエルがいなくなるとタガメも姿を消すでしょう。 そうすると生態系全体が崩れます」
と言って、生き物の多様さが生む不思議な世界が失われることを心配している。 ちなみにボウフラを食べる水生昆虫カエルがいなくなると蚊が大発生するのではないかという予測もある。

別々の容器で飼育、多摩動物公園
別々の容器に分けられて飼育されるタガメたち

関心をもってもらいたい

今年50周年を迎える多摩動物公園は、トキ類の飼育技術を開園以来蓄積し、佐渡トキ保護センター以外で国内唯一トキの繁殖に取り組んでいる。 このため、多摩動物公園にとってはカエルだけでなく生き物全体に対する関心を高めてもらえるような様々なイベントを行う年になりそうだ。


トカゲ太郎


 


訪問日 2008年3月4日

特集記事!! その3

井の頭自然文化園の取り組み

普通に飼っています

井の頭自然文化園の水生物館では、身の回りにいる小型の魚や水生昆虫など日本の淡水生物を観察できる。 もともと井の頭自然文化園では地元の自然と生き物を大切に保全することを展示の中心としていたため、国際カエル年の活動は、当園の得意とする分野である。

生活排水による水の汚れや河川改修による生息域の減少により、今ではそこら辺の生き物が “珍しい生き物” になってきてしまった。水生物館飼育係 荒井寛さんは、加えて、水面がつながっていないことをその理由としてあげている。

タンクの中は水藻がいっぱい。
荒井寛さん。非公開の飼育室には飼育中のカエルやイモリがいっぱい。
荒井寛さん。非公開の飼育室には飼育中のカエルやイモリがいっぱい。

「生息地域の環境が悪化すれば、他へ移ることが考えられるし、繁殖産卵のために移動する場合も少なくないのですが・・・」、

と語る荒井さん。 現実には堰によって川の流れに段差が出来たり、水田の用水路のため、水底を深く掘り下げるなど、生き物達が自由に動き回れる水面が分断されているのだ。


えっ、カエルが溺れるの?

国際カエル年の取り組みとして、今、繁殖飼育しているのは、ツチガエルアカハライモリだ。 ジャンプ力がそれほどなく、おとなしいツチガエルは、飼育しやすい。 オタマジャクシから成長して陸に上がってきたものだけでも200匹以上飼われている。

また、なるべく地元にいる普通の種類を守ろうというねらいから、アズマヒキガエル繁殖中だ。 どこにでもいるヒキガエルと思いきや、飼育ツチガエルよりも難しい。 ヒキガエルは乾燥に弱く水辺が必要だ。 しかし子供のヒキガエルは溺れてしまうため、陸場も作る必要があり、意外と手間がかかる。

さらに、関東地方ではよく見られたはずのアカハライモリの繁殖にも取り組んでいて、葛西臨海水族園とともに生息地の保全に力を入れている。

アズマヒキガエル
アズマヒキガエル

人気者は大食漢

ザリガニを食べるウシガエル


この他にもモリアオガエルニホンアマガエルなど様々なカエルが展示されていて、中でも人気なのがウシガエル。 4年ほど前に、吉祥寺の民家で見つかったもので、巨大な姿が人気をよんでいる。 時々、ネズミを一匹丸ごと食べないと痩せてくるほど食欲が旺盛で、普段は一緒に水槽にいるアメリカザリガニを食べている。 以前指にあったデキモノが治療されて、今は元気いっぱいだ。

見て! 珍しいんだから!!

ウシガエルとともに注目なのが、天然記念物ミヤタナゴや埼玉の熊谷市にしかいないムサシトミノなどの小型の魚だ。 でも、小さくて目立たないためチラっと見て通り過ぎてしまう人が多い。 そこで、数種類の水草を植えたり、石の置き方や照明などのデザインを考えて水槽全体の展示を見飽きないよう工夫している。

水藻がいっぱいのタンク。よく見ると魚やカメがいるよ。
水藻がいっぱいのタンク。よく見ると魚やカメがいるよ。

長年目立たないが貴重な水生生物に接してきた荒井さんは 「国際カエル年をきっかけに、水生生物やその周りの環境全体に目を向けてもらえれば」 としている。

井の頭自然文化園では、今後国際カエル年の様々な特別展示を企画していている。