トカゲ太郎のワンダー・ワールド
安佐動物園と人々が見守る
天然記念物 オオサンショウウオ
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(訪問日:2010年3月23日) 安佐動物園の写真館はこちら


オオサンショウウオのかお 写真協力 安佐動物園
オオサンショウウオの顔
大きなくちで動くものはなんでも食べてしまう。

守り続けた オオサンショウウオ

1971年の開園以来、広島市安佐動物公園は国の天然記念物オオサンショウウオの保護に取り組んできた。 そして1979年に初めて繁殖に成功し、2007年にはついに動物園で産まれたオオサンショウウオどうしの間に3世が誕生した。

また、野生のオオサンショウウオの研究・保護にも力を入れていて、北広島町を流れる志路原川(しじはらがわ) と松歳川(しょうさいがわ) に生息するオオサンショウウオを地元の人々とともに30年以上見守りつづけている。



世界最大の両生類

オオサンショウウオの仲間は日本のオオサンショウウオと中国のタイリクオオサンショウウオ、そしてアメリカにいるやや小型のヘルベンダーの3種。 日本の主な生息地は、岐阜、愛知、兵庫、岡山、広島、島根、山口、大分の各県で、四国でもごくまれに見つかっている。 なかでも中国山地を中心に広島県と島根県には数多くの野生のオオサンショウウオが生息している。 1993年に広島県北部で保護され2007年に亡くなった夢ちゃんは飼育されていた中で最も大きなオオサンショウウオで、なんと体長150.5cm、体重27kgにも達した。

  トカゲ太郎 トカゲ太郎
 




桑原副園長は生息域を守ろうという住民の意識の高さがオオサンショウウオを救ったという。


写真協力 安佐動物園


写真協力 安佐動物園
巣穴のまわりの掃除をする人々

ハンザキの棲む町

広島県北部の志路原盆地ではオオサンショウウオはハンザキと呼ばれて昔から親しまれてきた。 戦争の後、食糧難の時代には貴重なタンパク源として食用にもなった。 しかし、川の開発のために川底や川岸をコンクリートで固める工事が行われると、繁殖に適した環境が壊されて生息数が減ってきてしまった。 そこで安佐動物園では、地元の人々と協力してオオサンショウウオの生態調査と保護活動を積極的に進めてきた。

まずはオオサンショウウオの棲む川について知るため水生昆虫などの生き物の観察会を行った。 また、オオサンショウウオが棲みやすいように川底をコンクリートで固めないことや オオサンショウウオの身体の大きさを考えた段差にすること、人工の巣穴を護岸に作ることなどを開発工事の事前に提案した。 さらに、オオサンショウウオを地域の文化として育てるため2003年から年に2回オオサンショウウオの詳しい生態について地元で紹介している。

「野生のオオサンショウウオを保護していくには地元の方々の理解と協力がどうしても必要です。 人工巣穴が砂で埋まってしまった時も近くの住民の努力で切り抜けられました。」 と桑原一司副園長は当時のことを振り返る。 護岸がコンクリートで固められた川でも何とか野生のオオサンショウウオが繁殖できるようにと、1994年6つの人工巣穴が護岸に作られた。 そして、狙い通りオオサンショウウオたちは人工巣穴でも繁殖をしてくれたのだが、1997年から繁殖に失敗してしまうようになった。 巣穴の入口が砂でふさがれたことが原因だった。 そこで近くに住む人々が自ら川に入って巣穴から砂をとり除いてくれたおかげで、何とかこの問題を解決できた。

桑原副園長は共存の道は 「知ること」 「守ること」、そして 「譲ること」 だという。



父親が子育てします

野生のオオサンショウウオの繁殖は7月から10月ごろにかけて行われる。 安佐動物公園が行った繁殖行動の調査によると、まず“ヌシ”と呼ばれる大きなオスが8月のはじめごろ下流から上流へとのぼってくる。 (上流から下ってくる場合もある) その後、ヌシは古い巣穴の入り口を掘り起こして中に入る。 通常、ヌシは他のオスが入ってくると追い出してしまうが、メスがいったん巣穴に入ってくると他のオスを追い出すことはしない。 これはヌシの攻撃性を抑える何らかの物質をメスが出していると考えられ、他のオスの子孫も残そうという行動らしい。

オオサンショウウオは夜行性であるため夜に巣穴の観察は行われる。 以前に行われた観察によると、なんと27頭ものオオサンショウウオが巣穴の近くに集まってきたという。 そして、オス、メス合わせて5、6頭が巣穴に入って、2時間ほどすると出てきた。 1頭のメスがだいたい500個ぐらいの卵を産む。

そして、ここからヌシが一頭で卵を守る。 9月ごろに産み落とされた卵から幼生が孵化するのは11月ごろ。そして2月ごろ幼生たちは巣穴から出ていく。 それまでのあいだはヌシが子どもたちを守ってくれるので巣穴にいる幼生たちは比較的順調に育つ。 ただ、いったん外に出てしまうと、1000頭に1頭生き残れるかどうかの確率なのだそうだ。

人工巣穴の中にいるオスとメス
人工巣穴の中にいるオスとメス

銀色に輝いているのが卵 写真協力 安佐動物園
銀色に輝いているのが卵



トカゲ太郎 トカゲ太郎 巣穴の観察小屋
写真協力 安佐動物園
巣穴の観察小屋




志路原で足利さんは大人や子どもたちに紙芝居形式でオオサンショウウオの生態を分かりやすく紹介している。



卵から孵化する幼態 写真協力 安佐動物園
卵から孵化する幼態
  写真協力 安佐動物園


2007年生まれの幼生
2007年生まれの幼生
大きさはもみじの葉2枚分ぐらい。



種を守るため-人工繁殖と生息地の保護-

最近の研究からオオサンショウウオは生息する川によってそれぞれ違う可能性がでてきた。 このため、安佐動物公園では太田川水系に生息するオオサンショウウオのみを人工繁殖して、現在70頭の血統を登録している。 その中で最高齢のイガグリは1980年生まれの30歳だが、まだまだ若いお嬢様だ。 人工繁殖は生態の研究とともに、もし何らかの原因で野生種が減少した場合の種の保存という意味で大切な試みだ。

もちろん生息地全体の保全もオオサンショウウオを守り続けるために欠かせない。 オオサンショウウオが食べる魚やサワガニ、ドジョウなどの生き物たちが隠れる岩場や緩やかな水の流れなどを守ることは、さまざまな種類の生き物が数多く棲む豊かな自然環境を次の世代に残していくことになる。

数多くの野外調査に参加し、地元の人々との交流を深めてきた飼育展示係長の足利和英さんは、「多くの人々がオオサンショウウオを地域の財産だと思い始めてくれたことが何より大事です。 豊かな自然環境を守っていく中心はやはり住民の方々なのですから」 と話す。

イガグリ イガグリ




繁殖と同時に 動物たちを大事に育てたいと大丸園長は考えている。



動物たちが生き生き暮らせる動物園に

安佐動物公園ではオオサンショウウオのほかにも貴重な動物の保護・繁殖に取り組んでいる。広島県内で絶滅の危機にあるナゴヤダルマガエルもその一つ。 園内の施設で保護・繁殖を行うとともに、県内に2つしか確認されていない生息域の保全も地域の人々と協力して進めている。 このほか希少な種であるクロサイやアムールヒョウなどの繁殖にも成功しており、クロサイについては国内で飼育されている半数近くが同園の所有だ。

いろいろな動物の繁殖に成功している理由について大丸秀士園長は、「動物福祉ということを考えて、できるだけ広い空間で飼育してあげることを心がけています。 アムールヒョウなら上下の空間を木材で作ったり、バクは水浴びのためのプールを用意したり、動物の生態にあった環境をととのえることもまた大事です。 ミーアキャットはコンクリートではなく土の上にいますよ。 だって穴を掘るのが彼らの仕事ですからね。」 と話す。

このほか夏に8日間行われるナイトズーは大人気で、涼しさのなか探検気分を味わえる広島の夏祭りのひとつになっているという。 さらに今年は国際生物多様性年であり園内に生き物と自然環境とのつながりをていねいに解説する展示を用意している。

繁殖場は非公開だが、要請に応じて社会人や大学院生に対して人工繁殖についての説明も行っている。 繁殖場は非公開だが、要請に応じて社会人や大学院生に対して人工繁殖についての説明も行っている。