|
浜松市動物園
|
絵をクリックすると、別ウィンドーが開き画像を拡大して見ることができます。
- 目次 -
| 特集 1 |
2007年11月29日、飼育研究グループ長の小篠裕二さんに園内を案内していただきました。 |
| 特集 2 |
2008年9月21日、獣医師の牧野良則さんに、サル山の新ボス・ブル吉はじめ、たくさんのお話をうかがいました。 |
訪問日 2008年9月21日
春、サル山に平和が訪れた
|
先代のボス猿、ピースケが亡くなったのが3年前。 その後、ボスの座を狙ってオス同士が争いを繰り返しサル山は常に不安定な状態だった。 そんな中、ついに今年春、3代目ボス、ブル吉が誕生した。 とは言ってもこのブル吉、若いサル同士のけんかの仲裁に入ったり、メスの信頼が厚いといったいわゆるボスのイメージとはほど遠いようだ。
ボスの印である尻尾を上げて、エサを独り占めしてしまうぐらいで、あとはほかのサルたちと行動が特別違うわけではない。 「でもブル吉のおかげでサル山が安定したことは確かですよ」 と、ブル吉をカワイイわが子のように語る獣医師の高木 貴世さん。 しかし高木さんによると、群れには実は裏ボスが存在するという。 その名はオノウ。 1983年生まれで最長老のこのメス猿に認められない限り、ボスの座に君臨することはできないのだ。 サル山を担当してまだ5ヶ月の飼育員、花輪 泰生さんは、「ナンバー2のチボのほうが、ブル吉より体格が良くてまだボスの座を狙っているし、サル山の掃除をしていると体の小さなサルでも足元でこちらをにらみつけたり一匹一匹個性的ですね」 と、自己主張するサルたちの興味深い様子を話す。
|
 新ボス猿 ブル吉
|

|
ブル吉脱走
やっと安定したかに見えたサル山だったが、突然事件が起きた。 9月にブル吉がサル山から逃亡したのだ。 幸いブル吉は、すぐにお縄になって、反省のため10日間動物病院に収容された。 ベテランの獣医師、牧野 良則さんは、病院内でのブル吉について 「私が捕まえたものだから、私の姿を見ると目を伏せて体を丸めておびえていました。 ちょっと可哀想でしたね」。 と話し、ボスとして復帰できるかどうか危ぶんでいた。 しかし、いざサル山に戻ると、すぐにちゃっかり裏ボス・オノウの毛づくろいをして、その後は元通り尻尾をピンと立てて、大威張りだったそうだ。
 裏ボス オノウ
|
今でも忘れずにいます
ニシローランドゴリラのメス、ダイコが今年の春亡くなった。 はっきりとした原因はわからないため、麻布大学で現在解剖を行っている。 容態の悪いダイコの姿を雄のシュウには見せないようにしていたが、シュウは知っていたようだ。 亡くなったことも今はしっかり理解している。 花火の音が本当は怖いくせに、ダイコの前では強がって平気な顔をしてたシュウ。 担当の 堀尾 典史さんは、「今でもシュウの心のケアは、続いています」 という。 ダイコとはほとんど年齢が同じで、とても仲が良かったシュウの落ち込みようは、大変なもので、堀尾さんにいつでもそばにいて欲しいそぶりを見せる。 シュウから離れるときは、目で堀尾さんの後姿をずっと追いかけている。 「ゴリラは、見た目とはうらはらにとても繊細。 今でも放飼場にはめったに姿を現しません」、と堀尾さんは話し、少しずつでも元気を取り戻してほしい様子だ。
|
|
|
なにを考えているのやら
表情が顔にでるのはゴリラ。 怒ったり喜んだり嬉しがったりと激しく感情を表にだすのはチンパンジー。 逆になにを考えているのかさっぱりわからないのがオランウータンだという。 気まぐれなオスのオランウータン バリは、とんでもないほど飼育員をてこずらせる。 例えば、遊べるようにと布きれをあげると、気に入らないのか、飽きたのか、水でずぶ濡れにして投げ返す。 また、室内への出入りの際、扉に手や足を挟んで、開け閉めの邪魔をする。 自分の納得するまで外にいたりと、とにかくマイペース。 ただ、理由がはっきりしたリベンジのいたずらをすることもある。 発情期に雌のムカと会わせない時のことだ。 哺乳瓶にいれたミルクを与えると、わざとらしく目の前で牛乳をこぼしてもう一度入れなおしてこい、という眼つきをしたという。 「飲みやすいように少し温めたのにコノヤロー、と本当に思いましたよ」 と、苦笑いしながら話す堀尾さん。 しかし、雌に会わせないのには理由がある。 オランウータンの交尾は激しいのだ。 バリはムカに噛みついたり投げ飛ばしたりとムカの体が血だらけになってしまうこともあるという。 だから交尾には一週間ほど間をおくのだ。
「オランウータンは精神的にタフ。 ちょっと気難しい面もありますが、安心して見ていられますね。」 と話す獣医師の牧野さんのことを好物のサトウキビを齧りながらバリは平気な顔をして見つめていた。
|
背後から、ウォ~
牧野さんによれば、獣医師として動物をひと通り知るには5~6年かかるという。 動物は自分の体の弱い部分をなるべく隠そうとする。 野生では当たり前のことだが、獣医さんにとってはこれがやっかいだ。 信頼関係を築かなければ、体を触ることもなかなかできない。 「チンパンジーのチイコはなかなか慣れなくて餌さえ受け取ってくれませんでした」 という牧野さん。 もっとも神経を使いなおかつ危険なのは、猛獣。 餌で釣って少しずつ檻の中に誘い込むのだという。 少しでも異変を感じると、ウォ~と唸り声をあげて威嚇する。 一番緊張し十分に気をつけなければならないのは黒ヒョウ。 真っ黒で音もなく背後から忍び寄るのだという。
動物の体調管理には時には危険を伴うが、「何年たっても動物には新しい発見があります」と、 好奇心いっぱいの目で牧野さんは話していた。
|
|
|
イキイキ、ナイトズー
浜松動物園ではこの夏毎週末に4回ナイトズーを開催した。 多くの動物が夜行性であるため、暗くなって気温が下がるとイキイキと活動をはじめる。 暗くても、夜間照明をしてあるから、よ~く見える。 今年の夏、とくに人気があったのが、ビーバーの親子。 昼間は穴倉にこもって餌の時以外はめったに姿を見せないビーバー。 夜になるととたんに元気になって活動を開始する。 子供を口にくわえた愛くるしい姿や気持ちよさそうに水面を泳ぎまわる様子は、子供達に大人気だった。 園内の様子をまめに見て回る渥美園長は、
「昼間とは違う表情を見せる動物たちを、子供も大人も目を丸くして観察している姿を見ると、こちらも嬉しくなりますね。」
と、ナイトズーの成功に満足そうだ。 ただストレスを感じやすい類人猿など一部の動物たちは見学できないため、制限はある。 それでも闇の中に光るライオンの眼や、青いプールの中で棒と戯れるホッキョクグマの白く光る幻想的な姿など、夜の動物園は見所がいっぱいだ。
|
トカゲ太郎
|
|
訪問日 2007年11月29日
浜名湖のほとりで
浜松市動物園はもともと現在の浜松城のそばにありました。 館山寺温泉に程近い現在の場所に開園したのが今から25年前。 山の地形を利用して造られ広々とした自然豊かな動物園に生まれ変わったのです。 でも移った当時は花火大会などの音と光で動物たちが不安がるなど、新しい“生息地”に動物達は少し時間がかかりました。 それでも観光地が近いという利点からいろいろな地域の人々が訪れるようになり、ますます楽しい動物園になったのです。
|
獣医はつらいよ
麻布を引きちぎって激しく怒っているチンパンジー君。 理由は渥美雄一園長が近くにいるから。 獣医でもある渥美園長は注射をしたり身体検査をしたりするから、チンパンジー君にとっては「怖い人」なのだ。 健康を保って嫌われたのではツライ。 でも怒るのにも大変な体力が必要だから元気な証拠だ。 嫌われたって渥美園長は笑顔。
|
格好だけは一人前
「オスのトクがもう少ししっかりしてくれたらね」とジェフロイクモザルのカップルを見ながら困った顔で話す飼育員の岡本和夫さん。 「メスのナナは受け入れているのに交尾は格好だけなんだから」という岡本さんは息子の成長を願う父親のようだ。 二世の誕生にはもうちょっと時間がかかりそう。
|
|
|
ほら、ふわふわだよ
今、こども達にとって動物を身近に感じるのは、むずかしい。 おとなしくてかわいいカイウサギでさえ触るのにおっかなびっくりの子もいる。 そういう時飼育員の松下美砂子さんは優しく手助けをしてあげる。 「うまくだっこできない子が多いですね。 でもちょっと手伝ってあげると、ウサギのふわふわした触り心地を感じて、みんなとてもうれしそう」 と楽しい姿を見るのが松下さんの喜び。
|
パワーが違います
ガンガンガーン!! 突然カミナリのような音が園内中に響きわたってびっくり。 ヒグマのゴローが食事の時間に鉄の扉を叩いているのだ。 さすがは日本最強の猛獣の力だ。 「本当は気が小さいのに食べ物の時だけは威勢がいい。 普段はメスのピリカに気圧されているんですよ」と話す飼育員の神谷健治さん。 日頃の観察から性格がわかるのだ。
「隣のマレーグマのカップルはとても仲が良くてじゃれあっている姿がとてもカワイイですよ」と言いつつ神谷さんの好きな動物はなぜかフンボルトペンギン。
|
|
|
嫌いで悪いか
アジルテナガザルは飼育員の小田木得夫さんが嫌いだ。 いたずら好きなだけではないですか? と聞くと「いえ、本当に嫌いなんですよ。 生意気なヤツだと思っているようです。 隙を見せるとすぐに腕をつかもうとしたり何かと悪さします」と呆れ顔で、マントヒヒに葉っぱを与えていた。 でもそれがアジル君の本音なんだからのびのびしていてかえって安心なのだそうだ。
小田木さんと同じサル舎を担当する横山貴之さんは、「フランソワルトンのほうは、夫婦仲がとても良くて飼育が比較的楽ですね」という。 「ケガが怖いですからね。仲が悪くて喧嘩が絶えないとなると大変です」 とまめにサルたちの様子を見て回っている。
|
ベテランでも大変
「ゾウの飼育は10年やったからなんとか信頼関係は築けたけど、キリンはまだ1年、最低でも6年はかかるだろうね」 と話す飼育員の村木豊さん。 エサもゾウはイネ科だけどキリンはマメ科の干草を主体にあたえている。 キリンは良く反すうするから栄養価が高いものをあたえる必要がない、だからエサに違いが出てくるのだそうだ。 なるべく自然な展示にするためキリンはグラントシマウマやダチョウといっしょに放している。 「シマウマにキリンがちょっかいを出すことがたびたびある。 シマウマも怒って逆襲するからキリンのくちびるや耳を噛んだりするから目が離せない」 とベテランの村木さんでも大変だ。
|
|
|
黄金色に輝くGLT
GLTとはゴールデンライオンタマリンの略称。 日本には浜松市動物園にしかいない非常に珍しい小さなお猿さんだ。 「キヌザルの仲間では一番大きいから身体は丈夫。 飼育はそれほど手がかかりません」 と涼しげに語る飼育員の鈴木亮さん。 でもちょっと待って。 エサのりんごを1センチ角に切りそろえて数を数えてあたえたり、鳴き声を聞いて群れの様子を判断したり、話を聞きはじめるとどんどん出てくる。 ちなみにGLTは5種類以上の鳴き声でコミュニケーションをとっているのだそうだ。 「チビですけど以外と性格が激しいところがあります。 犬歯も鋭くてひどいケンカは大ケガをしますから、そういう時は仲裁に入ります」 と宝物のようにGLTを見つめていた。
|
浜松生まれのGLT、世界へ
現在オス8頭を飼っているが、これまでに8頭もの浜松生まれのGLTが世界の動物園へと旅立った。 これはすごいことだ。 GLTの繁殖は国際的な取り組みでアメリカの保護協会によって厳しく管理されている。 飼育研究グループ長の小篠裕二さんは飼育のかたわら協会との交渉を行っていて 「メスが死んでしまったのは非常に残念です。 たくさん産んでくれてよく頑張ってくれましたからね。 今後はぜひ新しいメスを仲間に入れて繁殖をさせたい」 と言う小篠さんは毛並みのすばらしく美しいGLTを誇らしく見つめていた。
足の下には猛獣が
オスの黒ヒョウを放飼場に出すため扉を開く飼育員の鈴木英孝さん。 去年10月に生まれた子ヒョウとお母さんが無事に獣舎の方に入ったのを確認して足の下にいるオスを放す。 子ヒョウがオスによって傷つけられないための配慮からだ。
扉を開けてもなかなか出ていかないオスは見慣れない人間の様子が気になるようだ。 「出し入れは慎重にします。 それから黒ヒョウは好奇心が旺盛で遊びをいろいろ考えてあげることが大事ですね」 と話す鈴木さんは猛獣に魅了されているようだ。 「おとなしいのですけど、ジャガーの筋肉すごいですよモコモコしていて」 と見ていることが楽しい様子だ。
|
|
|
疑惑の目、仲間だと思っていたのに
ニシローランドゴリラ君はとても疑り深い。 飼育担当の土井雅之さんが見知らぬ人間といるとどうも気になって仕方がない。 音には敏感で大きな音は大嫌い。 だから重機などで工事をしている作業員と土井さんが話しているのを見つけたらもう大変。 “お前は裏切り者だー” とそっぽを向いてしまう。
そんな時は 「俺は味方だよ、ほらこうしていっしょにいるじゃないか」 となだめるのだそうだ。 仲直りも楽じゃない。
|
地域の人々とともに
浜松市動物園では地域の人々に動物の魅力をもっと良く知ってもらうためのイベントが盛りだくさんだ。 動物の生態を理解しやすくするために、飼育員さんが担当している動物について解説したり、動物病院を見学できるようになるよ。 キリンといっしょに記念撮影をしたり、カンガルーにエサをあげることもできて、動物達を身近に感じられるようになるんだ。
まだまだ聞き足りない感じがしてもっともっと面白い話を聞きたかったなぁと思いました。 ご協力本当にありがとうございました。