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北海道野生動物研究所 |
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(訪問日 2011年7月28日)
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北海道には日本の中でも貴重な大自然が残り、その中には特有の野生動物が生きている。 北海道野生動物研究所はそうした野生動物の生態を知ることで、生息地とそこに暮らす生き物の保護を進めている。 なかでも日本最大の陸上哺乳動物であり人間との関わりも深いヒグマの話を中心に同研究所の門崎允昭(かどさきまさあき)所長に話を聞いた。 |
カムチャッカ半島のクリル湖付近のヒグマ (写真提供:門崎允昭) |
ヒグマの越冬穴 ヒグマはツキノワグマのように自然にできた穴を使わない。 他のヒグマが掘ったものや自分で横穴を掘って、複数の冬ごもり穴を使い分ける。 雪が吹き込んできたり、地下水が入ってきたりすると冬ごもり中も穴の中を快適にするため土をかき出す。 |
日本にヒグマは北海道にしか生息していない。 ヒグマの暮らす地域は北海道全体の約50%にもおよび、なかでも知床と渡島(おしま)の両半島に多くいる。 主な生息環境は標高が1500m以下の起伏のある山岳地や森林で、今のところ北海道全体で約1900~2300頭のヒグマが生息しているようだ。 頭数が大きく変わるのは出産前の12月が最も少なく、出産後の2月末が一番多くなるからだ。 |
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北海道のオスのヒグマは大きいもので体長が約2.4m、体重が約400kgにもなる。 繁殖時期の5月下旬から7月上旬または母子以外はふつう独りで行動し、11月下旬ごろから冬ごもりに入る。 翌年の3月中旬から5月上旬には越冬穴から出てきて再び行動しはじめる。 メスは冬ごもりの間の1月から2月中旬に出産し、穴から出てからも子グマが1歳過ぎから2歳過ぎまでいっしょに行動し子育てをする。 |
北海道のヒグマの親子 母と子は夏から秋にかけて別れていく。 その時小グマは何度も振り返って母グマとの別れを惜しみ、母グマもまたわが子の後ろ姿を見つめるという。 |
エゾジカ 北海道のエゾジカは本州のニホンジカの亜種。 身体の大きさがニホンジカよりエゾジカの方が大きい。 |
ヒグマは人間と同じように植物も動物も食べる雑食だ。 でも、ヒグマの胃や腸の中には牛や馬のように植物繊維の消化を助けてくれる微生物がいない。 このためフキやセリ科などの水分の多いものやさまざまな養分を多く含む草やヤマブドウなどの樹の実を好んで食べる。 動物性の食べ物は、シカのような大型哺乳類からサケ・マスなどの魚類、アリやハチ、コガネムシの幼虫など昆虫も食べる。 また、好物のザリガニは沢の中の石をひっくり返して食べる。さらに頻繁ではないが共食いもする。 |
エゾモモンガ 北海道の平地から亜高山帯までの森林に生息している。 木の実や花などの植物や昆虫も食べる。
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ナキウサギ 北海道のナキウサギは世界の中で最も南に生息している。 |
野生のヒグマを40年以上にわたって調査・研究してきた門崎所長はヒグマのことを「自然の元締め」と呼ぶ。 「人間以外に恐れるものはないのですが、さまざまな動植物があってこそヒグマは生きていける。 ということはヒグマのいる場所は豊かな自然が残っているといえます。 個々のヒグマを大切にすることがそれぞれ地域固有の自然を守ることにつながるのです。」 と門崎所長は語る。 |
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ただ、ヒトの利用する土地が増えるにつれて、ヒグマとヒトの接触による事故も起こるようになった。 甘いものに目がないヒグマはトウモロコシやビート、スイカなどの畑に近づいて来てしまうのだ。 また、生息場所近くの蜂箱にもヒグマが蜂蜜目当てに寄って来る。 こうした場合、ヒグマが通る場所に有刺鉄線の網を張り巡らせたり、蜂箱の回りを電気柵で囲んだりするなどして食害を防ぐ。 門崎所長は草木が生い茂る山奥に分け入ってヒグマを直接観察し、そこから食べ物の種類や休憩場、どのようなものを避けるかなど、具体的な暮らしぶりを明らかにしてきた。 |
キツネ 北海道のキタキツネは本州のホンドギツネよりやや大きい。 キタキツネのお話は こちら。 |
「ヒグマも人間も同じです。山の中では歩きやすいところを選ぶ。 例えば、ヒグマは食べ物を見つけたり、移動したりするのによく沢を利用します。 とはいえ単独で行動することを好むから他のクマや人間と出くわす時間帯や場所をよく覚えていて巧みに遭遇することを避けている。」 と門崎所長はヒグマの生活の一端を説明する。
それでも人間の警告を無視して畑の作物を繰り返し食べにくるヒグマはいる。 こうなると残念ながら駆除することになってしまう。 「ただ、駆除のやり方を考えて欲しい」 と門崎所長は訴える。 山奥でひっそりくらしている無関係なヒグマまで撃ってしまうことがあるからだ。 「個体によってヒグマの歩幅や歩様は違います。 石灰をまいて歩幅を測ったり、侵入経路を見つけたりするなど、畑を荒らすヒグマを見つけ出す方法はある。 いろいろ試した結果、やむを得ない最終的な手段として駆除を選択してもらいたい。」 と門崎所長は話す。 |
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ヒグマに対して畏敬の念をもつことが大切という門崎所長。 ヒグマを観察する時、十分な距離を置き、あらかじめ逃げるルートを決めておくなど細心の注意を払う。 |
日本熊森協会の顧問でもある門崎所長は、ヒグマやクマ類のことをより多くの人々に知ってもらおうと講演会を各地で行っている。 最近多く発生しているクマと人間の接触による事故についてもその原因と解決のし方を解説している。 「特にヒグマが人間を襲う理由は3つあります。 一つは、ヒトをエサとして食べるため(ツキノワグマはヒトを食べない)、2つ目は2才クマによるいらだちや悪ふざけ、そして、3つ目が子を守るためや縄張りに侵入したなど、人間を排除するためです。 いずれの場合にしても対応の方法はあります。」 と、門崎所長は冷静な行動を求めている。
まず、ヒグマは見つからないように草地に身を潜めて休憩する。 さらに沢の曲がった場所など見通しの悪いところでは突然出くわしてしまうこともある。 こうしたことを避けるためヒグマの生息地では足跡やフンなどこん跡を見逃さないなど、常に警戒心をもって移動する。 また、笛などを吹いてこちらの存在をヒグマに知らせることもできる。 それでも出会ってしまったら、ヒグマの進路を邪魔せずゆっくりとその場を離れること。 そして、万が一攻撃してきた時は鉈(なた)などで反撃する。 門崎所長は北海道で人間とヒグマがもっと穏やかに暮らせる日が訪れることを強く願っている。 「ヒグマは雪の斜面を腹ばいになって滑ったり、鼻息で水たまりをブクブクと泡だてたり、と明らかに遊んでいるような行動をする。 ヒグマの母子は固い絆で結ばれています。 母グマは命をかけて小グマを守り、小グマも母親を慕ってやまない 。忙しくエサを探し回り、時には遊び、そして子育てをする。 一頭一頭のヒグマが人間と同じように厳しい大自然の中で限りある一生を必死に生きている。」 と、門崎所長はヒグマの子育てを観察した時のことを振り返る。 |
門崎所長は現地の研究者の協力を得て北米やロシアなどのヒグマやホッキョクグマの生態を調査している。 |
クマの背こすり 縄張りを示している、樹皮の匂いにひかれる、ダニ・シラミなどの寄生虫でかゆいためなど、このような行動にはいくつかの理由が考えられる。 |
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門崎所長は帯広畜産大学大学院を卒業後、北海道大学で農学博士号を取得。 その後、北海道開拓記念館に勤務し野生動物の研究を行い、同館を退職後に同研究所を設立し現在にいたっている。 北海道野生生物研究所で行っている生物の生息状況の調査や保護はヒグマだけに限られたものではない。 シカやキツネなどの比較的大きな動物からリスやネズミにいたる小さな哺乳類にまで目を配っている。
サロベツ原野は北海道の最北端にあり、その中に広がる湿原はラムサール条約に登録されるほど世界の中でも貴重な動植物の宝庫だ。 でも、近年この湿地が干上がってしまい面積が縮小する傾向にあった。 そこで、湿地溝ダムを作り湿地の保全をする試みが計画された。 門崎所長は共同研究者とともにサロベツ湿原の調査を行い、北海道にしか生息していないトウキョウトガリネズミを15頭採集してその生息状況を確認し、開発行為について助言を行った。 このほか道路工事では周辺に暮らすシカやヒグマが道路を安全に横断できるように四角いトンネルのような函渠(かんきょ)を作り、成果を上げている。 |
ヒグマの先祖現在、最も古いクマの仲間の化石はドイツで見つかった約2000万年前のもので、「エルムの先祖グマ」 と呼ばれている。その後、クマの仲間はさまざまに進化し、中国の北京近郊の周口店で発見された約70万年前の化石がヒグマの起源と考えられている。 また、かつて日本でヒグマは本州から四国および九州にまで分布していた。 その証拠に瀬戸内海の漁師の網にヒグマの化石がひっかかるなど、各地でヒグマの化石が見つかっている。 それらのヒグマは大陸から渡ってきたと考えられるが詳しい時期はまだ分かっていない。 寒冷な気候を好むヒグマは次第に北へ北へと移動し、北海道に棲みついたようだ。 世界のクマ
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