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サンゴのおはなし |
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(訪問日 2009年6月11日)
日本全体にサンゴはいったいどのくらい広がっているのか。 今のところ冬の海水温が18度以上ある種子島(鹿児島県)がサンゴ礁の一番北とされている。 そして、サンゴ礁として地形を作ってはいないが、まとまったサンゴの群集が発見された最北の地域は島根県の隠岐で、世界の中でもここが北限とされている。 |
山野さんはサンゴの居場所を見つけるだけでなく、サンゴの保全活動にも取り組んでいる。 まず、近年激減していると言われるサンゴ礁だが、いったいどのくらい失われているのか正確なデータを得る必要があった。 このため、昨年7月朝日新聞社の協力を得て石垣島の石西礁湖の空中撮影を行った。 石西礁湖を選んだ理由は、日本最大のサンゴ礁があり、過去のデータもそろっていることから増減の調査に最も適していると判断したからだ。 調査は空からだけでなく海に入ってシュノーケリングを行い、サンゴの被度(サンゴが海底をおおっている割合)や藻類の被度も確認した。 そして得られた結果は予想以上だった。 2003年と比べて2008年には約70%のサンゴが減っていたのだ。 原因は白化現象。 石垣島の中でも特に美しいとされる白保のサンゴ礁などもかなりひどい状態になっていた。 |
![]() 朝日新聞社との協力で上空からサンゴ礁のリサーチが行われた。
(写真提供、国立環境研究所)
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「海水温や海面は年々上がっていますが、宮古島のサンゴ礁は白化がそれほど進んでいません。 これは宮古島が平な島で海が陸からの影響をそれほど受けていないからだと考えられます。 海を汚さないことによってずい分変わってくると思います。」 と話す山野さんは畜産農家や海岸近くに住む人々に協力を求める話し合いを行っている。 今あるサンゴ礁を保全すると同時に育てる試みも始められている。 この場合もサンゴ礁の空と海からの分布調査が役に立っている。 陸からの影響が大きい河口付近は避けることや台風の通り道でないこと、新鮮な海水がいつも流れている場所など、調査結果から明らかになった点を考えて移植を行えば順調に育ってくれる。 さらにサンゴの種類も大切になってくる。 例えばミドリイシ類のような枝状のサンゴは白化にやられやすいが成長は早く、いい環境さえそろえば回復は早い。 逆にノウサンゴのようなかたまり状のものは白化に強いが成長は遅い。 また、沖縄本土のサンゴ礁の源となっている慶良間諸島の阿嘉島周辺など、サンゴの卵が産まれる源を見つけてその場所を保護する必要もある。 |
みんなで進めるサンゴの保護漁業や観光、防災(サンゴ礁は自然の防波堤になる)など、サンゴは多くの恵みを地域の人々にもたらしてくれる。 こうしたサンゴの恵みについての理解が深まるにつれてそれぞれの地域で、個人やグループ、団体などさまざまな人々がサンゴ礁を守り、育てるための活動をはじめている。 こうした活動から得られた成果をより効果的なサンゴの保護につなげるため環境省は、昨年6月に「サンゴ礁保全行動計画策定会議」を立ち上げた。この会議は、環境省や水産庁、林野庁、国土交通省などの関係省庁と山野さんをふくむ11人の大学教授や研究員からなる専門家で構成されている 会議の中で山野さんは 「いかりによってサンゴを傷つけないようブイにロープをくくりつけて船を固定する工夫をダイバーの方々はされています。 旅行会社や航空会社ではサンゴの移植をするエコツアーを企画するなどしています。 こうした方々とつながりをもってサンゴを取り巻くいろいろな活動についての理解を深めていきたいですね。」 として、専門家だけでなく日々海に潜って保護活動をつづけている人々の意見も大切にしたいと考えている。 |
![]() 日本のサンゴ礁
環境省・日本サンゴ礁学界 編 日本のサンゴについての資料が満載です。お問い合わせは環境省へ。
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「ツバルはサンゴの死骸が積もり積もってできたいわばサンゴの島です。 汚水の垂れ流しやゴミの処理をよりサンゴにやさしいやり方にしていけばサンゴ礁の悪化をくい止めることができるはずです。 そうすることで海から陸に砂が安定して補給されます。 また有孔虫も大切な砂の元でこれも海をきれいにすることで守ることができます」 として今後もツバルの人々と話し合いを続けていくという。 このほか山野さんはフィリピンやパラオ、インドネシア、ベトナムといったサンゴ礁の多い国々とも情報の交換を行うとともに、2011年から始まる韓国との共同調査に向けて準備を進めている。 |
サンゴは自分で地形を作り出すとても珍しい生き物だ。 また5億年前の昔から生き続けている生きた化石として進化という面から注目している人も少なくない。 さらにさまざまな生き物たちの生活している場であり多様な海の生態系を知る上でも貴重な存在だ。 「サンゴ礁学という新たな研究が今進められています。 わたしの場合は地学ですが、サンゴは生物学、工学、人文社会学、水産学といったいろいろな領域にまたがっていて、とても不思議で魅力のある生き物なのです。」 という山野さんは、7月に慶応大学で講演を予定するなど、大学やNPOのセミナー、ダイビングフェアーなどさまざま場所でサンゴの魅力を伝えている。 |