トカゲ太郎のワンダー・ワールド
環境社会新聞と石田梅岩

(訪問日 2012年10月15日)

未来の自然のため共に学ぼう ― 環境社会新聞 ―

多様な生き物が健康に暮らしていくためにはきれいな空気、水、土壌が必要だ。今回は環境社会新聞社
西川睦生社主に企業や人々が取り組む環境保護のためのこれまでの活動とこれからについてお話を聞いた。

トカゲ太郎


環境社会新聞は廃棄物やリサイクルの話題を中心とした内容からなり、行政機関やNGO、NPOなどの団体から一般市民にいたる多くの人々に読まれてきた。平成18年から同紙の社主を勤めている西川さんは、廃棄物にだけにとどまらない環境関連全般をとり上げる新聞として紙面を一新。このため現在は地球温暖化や低エネルギー社会、心の教育の復興など自然環境とともに派生する多様な事柄を掲載している。

日本全国で大気や河川、海などの汚染が公害として大きく注目されはじめたのは1970年ごろからだ。西川さんが公害防止管理者としてさまざまな工場を回り始めたのはちょうどその頃で、きっかけは父親が公害病を患い苦しんだことだった。以来、主に中小企業の排水の改善と維持管理のため、立ち入り検査や助言を行ってきた。その数は2万社を超える。また、環境カウンセラーとして企業と市民の橋渡し役となる活動も続けてきた。西川さんが環境社会新聞社の前社主に見いだされて同紙に記事を書きはじめたのはこうした仕事を通じてのことだった。

水や空気をきれいにしましょう、というと聞こえはいいですよ。でも、企業にとって環境に配慮することはお金や労力だけがかかる嫌なことなのです。本業とは関係ないことがほとんどですし、直接利益に結びつかないわけですから。」と話す西川さんは今までの仕事の難しさを振り返る。


   野生動物は自然の与えてくれる恵みの中で暮らしている。人間の都合でその生活を奪うことはゆるされない。

ただ、こんなケースもあったという。ある会社でフェノール化合物とフッ素化合物の処理を依頼された時、その会社で扱っていた300種類の薬品を組み合わせて使うことで水質の改善を行うことができた。なにしろ通常ならば3000万円はかかる処理費用を600万円に抑えたのだから、この時はさすがに喜ばれた。水質改善だけなく、自転車通勤を奨励して燃料費を抑えたり、新聞を回覧することで余計な購入数を減らしたりと、いろいろな会社内のムダを省くことも勧めてきた。些細なことがらも見逃さずムダをなくすことが企業の利益を損なわず、環境にもやさしいことになると考えたからだ。



大量消費を止めなければ

トカゲ太郎

ただ、今のような生産されたモノやサービスが大量に消費されるという社会のしくみの中ではこうした企業の努力にも限界がある。
「企業の環境改善の努力やムダの削減はこれからも進んでいくでしょう。けれども、今のままでは社会全体のしくみを大きく転換しないかぎり、国全体が行き詰まる気がします。」と、西川さんは大変な危機感をもって現状を見ている。

地球温暖化など世界規模の問題も迫っている中で、どうればかつてのような元気で活発な社会をとりもどせるのか。西川さんやはり一人一人の心の持ち方にその鍵があると考えている。

「企業人であっても家に帰れば一人の人間です。家族が安全な水を利用し、より良い空気の中で暮らして欲しいと誰しも考えているはずです。ただ、それを本当に実感するには子どもはもちろん大人も自然環境の大切さを学ぶことです。そして考え方や価値観が大きく変わることで、人々の暮らし方にも変化が起こるでしょうし、企業も変わる。そして社会のしくみ全体が大きく変わるでしょう。」と、西川さんは学ぶことを今後広く浸透させていきたいと考えている。



温故知新 ― 石田梅岩に学ぶ生き物との共存 ―

石田梅岩(1685~1744年)は江戸時代の思想家で、同社の本社がある京都府亀岡市出身だ。西川さんは梅岩の教えの中に今に通じる本当の智恵が示されているという。
その石田梅岩の挿話の中に次のようなものがある。

「ある村で労役用の馬がへとへとになって倒れてしまった。かわいそうに思ったひとりが身体に水をかけてやると、その様子を見た人がまた水をかけてあげた。すると次から次へと馬に水をかける人の輪が広がった。」

梅岩はこの話を通じて、「生き物は何も人間に食べられたり、使われたりするために生まれてきたのではない。だからこそ、食べる時は感謝し、働いてもらう時はいたわる心が大切だ。」と説いている。

梅岩の思想から学ぶべきことは、人間だけでなくその他の生き物を慈しむ心を育むことであり、日本人は伝統として自然や動物を敬うことを心の奥底にもっていると西川さんは考えている。

石田梅岩
石田梅岩 (1685~1744年)
   石田梅岩は儒教、仏教、神道を基本に石門心学を創始した。呉服屋で働きまがら学問を修め、45歳からその思想を公衆に説きはじめた。倹約や正直など基本的な道徳を説くその思想は特に商人に支持され、梅岩は60歳で亡くなったもののその思想は受け継がれた。江戸後期には農民・武士にも普及し、全国に講舎ができた。


広がる市民の輪

今年9月、環境社会新聞社は大阪市住吉区に開校した「なみはや市民大学」と提携し、伝統文化の復活や地域の再生に共に取り組んでいくことになった。同大学は伝統文化以外でも教育、福祉、地球環境など、心の豊かさをつちかうことを理念にした科目を開講している。

併せて同社では、新しい環境保護の技術についても積極的に発信していく方向だ。そのひとつがLEDによる水質改善だ。紫外光LEDには殺菌作用があって、空気や水の清浄化に応用できるからだ。余計な化学薬品を使わず、電力量を極力抑えて清浄化するLEDはまさに次世代の技術といっていい。さらに無農薬、無肥料によるできる限り自然に負担をかけない農業技術の模索など、食べ物への配慮を通じた環境保護にも注目している。

亀岡市の名物、保津川下りも紅葉や渓谷など自然に恵まれているからこそ楽しめる。西川さんは亀岡の偉人・石田梅岩の思想を受け継いで日本の自然を守っていきたいと考えている。
   亀岡市の名物、保津川下りも紅葉や渓谷など自然に恵まれているからこそ楽しめる。西川さんは亀岡の偉人・石田梅岩の思想を受け継いで日本の自然を守っていきたいと考えている。


「原子力による発電が問題になっています。代替となる風力や太陽光などによる発電は、自然に対する負荷や供給量など今後も技術開発を進めるべき点はあるでしょう。ただ、すでに使おうという意志さえあれば使える段階にあります。水や空気の浄化も行政やその他の団体がいうからするのではなく、自然環境を守るという考えが心の中にあれば自ら進めると思います。大切なことは人間だけでないその他の生き物の暮らしにまで配慮する“こころ”を起点にして行動することではないでしょうか。虫も動物も棲めないような大地や空気の中で人は生きてはいけないですから」と、西川さんは話し、困難な状況の中でも少しずつではあるが市民の間に心の輪が広がっていることに自信を深めている。


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