トカゲ太郎のワンダー・ワールド
御船町恐竜博物館
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訪問日 2009年6月9日

御船町恐竜博物館
御船町恐竜博物館 (熊本県)




肉食恐竜の中足骨
写真中央の化石は、池上主任学芸員が1990年に発見した肉食恐竜の中足骨
トカゲ太郎

はじまりは肉食の恐竜

今からちょうど30年前の1979年夏、自由研究のため貝の化石を見つけに御船町を訪れていた当時小学1年生の男の子が偶然、黒い何かを岩の中に見つけた。 それから5年後、その黒いものが肉食恐竜の歯の化石であることが日本古生物学会で発表された。 日本で初めて肉食の恐竜が発見されたのだ。 そして、メガロサウルスの仲間とされるその恐竜はミフネリュウと名付けられた。

時は流れて1990年早春、当時熊本大学院生だった池上直樹さんは淡水性の二枚貝の化石を見つけに天君(あまぎみ)ダムの下流近くをうろうろしていた。 そして黒い棒のようなものを地層の中に見つけ 「まさか・・」 と思いつつも一応大学に持ち帰った。 教授に見せたところ 「これは!もしかすると」 となって、早くも夏には初の恐竜化石の発掘調査が始まった。 「黒い棒」 はアロサウルスに似た肉食恐竜の中足骨だった。

その後1998年に御船町恐竜博物館は開館した。 今、池上さんは博物館の主任学芸員だ。


化石発掘現場
化石発掘現場 (写真提供 御船町恐竜博物館)



スッポンモドキの甲羅の化石 熊本県内の高等学校の先生と生徒たちによって発見された白亜紀後期のスッポンモドキの甲羅の化石
トカゲ太郎

スッポンモドキとティラノサウルス

熊本県の中央付近にある御船町の化石の地層は御船層群と呼ばれている。 地層の年代は白亜紀後期。 層の上の部分が約8500万年前の陸成層で、下の部分が約9000万年前の海成層だ。

上層からはカルノサウルスやティラノサウルスなど5種類の獣脚類をはじめ、ヨロイ竜類の仲間、翼竜類の仲間、カメの仲間、ワニの仲間などの化石が数多く見つかっている。 下層からはアンモナイトの仲間やゴショライアと呼ばれる二枚貝の仲間などが見つかっている。

博物館の興味深い展示化石の一つは上層と下層の両方で見つかっているスッポンモドキの甲羅。仲間の中で唯一スッポンモドキは白亜紀から現在まで子孫が生き続ける生きた化石だからだ。




白亜紀の御舟町

トカゲ太郎8500万年前の日本は大陸とつながっていた。このためソウル大学の専門家らが地層の特徴から推測したところによると、年間の降水量が700mm以下の半乾燥気候という結果が出た。高い樹木は少ないものの草原が広がり、ところどころに沼や湖が点在していた可能性がある。白亜紀の御船町ではティラノサウルスの足元をスッポンモドキが泳ぎ回っていたかもしれない。



そのほか白亜紀後期のワニの骨と現在のワニの骨など今と昔を比べる標本や世界的にも少ないテリジノサウルスの脳函(脳が入っていた骨)など、進化について考える化石や珍しい化石が数多く展示されている。

白亜紀後期のワニの骨と現在のワニの骨など今と昔を比べる標本
白亜紀後期のワニの骨と現在のワニの骨など今と昔を比べる標本



ばらばらの化石の中から

今のところ御船町で見つかった恐竜の化石から個体の全体を復元したものはない。 化石のひとつひとつがバラバラでしかもさまざまな種類の個体が混ざった状態で産出されるからだ。

アズダルゴ科翼竜の頚椎骨 アズダルゴ科翼竜の頚椎骨(けいついこつ)

「例えばティラノサウルスの子供が死んで化石となったとします。 その過程で骨は雨や川などで流されてほとんどの場合四方八方に散らばってしまうのです。 そうなると大人のティラノサウルスの骨と混ざったり他の種類の恐竜や爬虫類、その他の動物の骨と混ざったりするし、ほとんどは消失してしまいます。 ひとつの個体がまとまって一か所に集まり保存されるには他の生物による分解や水の流れによってバラバラになってしまう前に埋まることが必要になるのです。」 と池上さんは個体の復元がたいへん難しいことを説明してくれた。

トカゲ太郎

ではなぜ、これはテリジノサウルス、そっちはハドロサウルスと一部分しかない化石からその種類まで見分けがつくのだろう。 池上さんによれば 「それは種類によって骨の特徴がそれぞれあるからです。 例えばテリジノサウルスの後頭部の骨はとてもユニークですぐに見分けがつきます。 また、これまでの研究や他の化石と比較して確かめることができます。 でも保存の状態によっては獣脚類の仲間ぐらいしかわからない化石も多くありますよ」 と教えてくれた。 ちなみにティラノサウルスについては上アゴの前方の歯の化石が御船町で見つかっているそうだ。

とはいえ一部分でも恐竜の化石を発掘しそれらを分類していくには、たいへんな時間と手間がかかる。 加えて重要と考えられる化石については論文を国際的な学会に発表する必要がある。 博物館ではこれまでにアズダルコ科の翼竜についての論文が池上さんによって発表された。 論文の内容は、化石の見つかった地層の年代や化石の保存状態、その特徴、同じ仲間の化石との比較など、英文で書かれている。 そうすることで世界中の研究者がその恐竜の化石が御船町にあることを知り自分の研究に役立つ情報を得ることができるのだ。



獣脚類の肉食恐竜の歯(白亜紀後期)

過去と今をつなぐ作業

御船町博物館では恐竜や化石のことについて知ってもらうため一年に20回講座を開いている。 また、館内にある学習室では岩石カッターや電子顕微鏡を使って自由研究ができる。 また、博物館に問い合わせれば御船地層群に行き実際に化石を採集することもできる。

「化石を採掘することはとても楽しい作業です。 それと発掘現場の環境を観察することでいろいろなことを知ることができます。 化石の見つかった場所の状態を観察し記録することは化石そのものと同じくらい大切ですから。 土の色や成分を調べて、川だったのか、沼だったのか、火山が近くにあったのかなどを推測することもできます。」 と池上さんは化石を取り巻く面白さはさまざまな方向へ広がるという。

池上さんは子どもたちだけでなく大人にも恐竜や化石、進化についてその魅力を伝えていきたいと考えている。 「恐竜の生きた時代の環境を考えることで自然と今の環境についても目を向けるようになります。 また生き物が長い年月をかけて進化してきたことを知ることは命の大切さやわたしたち自身の自然に対する理解を深くしてくれるのではないでしょうか」 と恐竜のつきない魅力を語ってくれた。



池上さんも化石採集に参加する
池上さんも化石採集に参加する。 化石を見つけるコツは、転石(てんせき)を丹念に拾って観察すること。




発見された肉食恐竜の化石 ベロキラプトル類の歯。

こがんだったとか

最後にとてもいい話をひとつ。

トカゲ太郎1985年のこと、小学生のY君は御船町の白岩というところで表面に化石らしいものがある石ころを見つけた。 一緒に来ていたお父さんのKさんに見せると 「こがんもんが化石のはずはなか」 と全く無視。

それから月日は流れておじいちゃんになったKさんは恐竜大好きの孫を連れて博物館を何度か訪れた。 その時Kさんはふと肉食恐竜の歯の化石に目が止まった。 「こがんだったとか。 歯がギザギザしとるね」 とあの日のことを思い出した。

幸いYさんはあの石ころを大切に保管していた。 博物館で詳しく調べると確かに肉食恐竜の歯に特有の鋸歯(セレーション)と呼ばれる小さなギザギザが見つかった。 親子三代によって新たに肉食恐竜の歯が発見された。



御船町恐竜博物館の館内 トカゲ太郎

御船町恐竜博物館

熊本駅から交通センターまでバスで15分。 または熊本空港から交通センターまでリムジンバスで50分。 交通センターより熊本バス御船営業所まで、御船方面行きバスで45分。 そこから徒歩で5分。


月曜日と年末年始を除き毎日開館。 9:00~17:00

詳しくは御船町恐竜博物館のホームページ http://www.mifunemuseum.jp をご参照ください。