トカゲ太郎のワンダー・ワールド
ヒグマと共に暮らす その1

  
(取材日: 2013年3月)

白いヒグマ

北海道の道北にある西興部村(にしおこっぺむら)付近で、昨年7月末から10月末にかけて白いヒグマが目撃された。白ヒグマを発見したのは中学校教員で北海道熊研究会会員の富山光太郎さん。富岡さんによれば、白ヒグマの体長は1mほどで眼が赤く、鼻先は黒くなかったという。この報告を受けて、同会代表で、ヒグマの研究家でもある門崎允昭さんは、このヒグマは昨年5月から6月にかけて親から自立した1歳9か月程の子熊で、眼の色から判断すると病気でメラニン色素が欠けたアルビノの個体であると見ている。

「極めて稀なケースで、北海道で白いヒグマがはっきりと確認されたのは今回が初めてです。遺伝学や生態学の面から見ても貴重な個体です。」と門崎さんは話し、駆除することや捕獲して発信機を付けることがないように北海道庁や北海道猟友会に要望書を提出した。

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富山光太郎さんが撮影した白ヒグマ
富山光太郎さんが撮影した白ヒグマ
北海道熊研究会提供

好奇心から

北海道熊研究会はまた、昨年、一昨年と札幌市内にヒグマが出没した件について札幌市あてに要望書を提出した。

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門崎さんによると、2011年と2012年に札幌市内の住宅地に姿を現したヒグマはいずれも、満2才未満の親から自立した若熊であるという。好奇心から住宅地がどのような場所なのか確かめに来ただけのようだ。
「過去に2才未満のヒグマが人を襲った事例はありません。大騒ぎする必要はないはずです。」
と門崎さんは話し、市側に冷静な対応を求めている。

同会の資料では、1993年以前に人々が利用する里山にヒグマが姿を現すことはめったになく里山と奥山の境界付近に限られていた。しかし、1994年からは里山や公園などに出没するようになった。それでも1999年と2000年の年間の出没回数は5回程度だったが、2001年以降は出没回数が年間10回を超えるようになった。

1973年以降に札幌市内で起きたヒグマによる人身事故は、2001年5月に定山渓で男性が襲われ亡くなった事故一件だけで、この時のヒグマは8才の雄熊だった。このほか札幌市内で目撃されたヒグマは、移動のために道路を横切ったものや果物目当てに果樹園などに侵入したものなどで、これらの事例のヒグマの年齢はさまざまだった。同会ではこのようなヒグマに対しては電気柵や有刺鉄線柵を巡らせることで再び侵入することを防げるとしている。さらに個体識別のために奥山で毛のサンプルを採集しDNA鑑定を行う手法に対しては疑問を呈している。

   知床半島では1990年代からエゾシカが急増した。これにともなってヒグマのエサとなるセリ科の植物などをエゾシカが食べてしまい、ヒグマはかわりにエゾシカを襲うようになったらしい。これまでも冬の間に死んだエゾシカを食べていたが、積極的に狩りもるようになった。知床だけでなく十勝でも同じようにエゾシカをエサとしている。ヒグマが環境の変化に合わせて巧みにエサを変えてくれるおかげで、エゾシカが爆発的に増えることを防いでいるのかもしれない。

白いヒグマについて

現在、世界の中で白ヒグマの生息が確認されているのは国後島と択捉島だけだ。なかでも国後島に関しては2009年に調査団が写真撮影に成功した。同島に暮らしているヒグマは3000頭ほどで、そのうち1割が白ヒグマであると推定している。これらの白ヒグマはアルビノではない。白い毛皮はサケなどの魚を捕まえる際に目立ちにくいことから独自に進化したのではないかと考えられている。

世界にはこれらの例と異なる白いヒグマがいる。ヒグマとホッキョクグマが交配したものだ。最初に野生で確認されたものは2006年にカナダの北極圏で撃たれたヒグマだ。このクマはハイイログマ(ヒグマの亜種)の父親とホッキョクグマの間に生まれたものだ。このほかにも2010年にカナダのビクトリア島で一頭の白いクマが撃たれDNA鑑定した結果、ハイイログマとホッキョクグマの雑種と確認された。このようなことが起きる背景には地球の気候変動がある。温暖化によってハイイログマがホッキョクグマの生息地まで進入できるようになったからだ。また、ホッキョクグマとヒグマは共通の祖先をもち約15万年前に分かれて進化したため交配が可能なのだ。

北海道熊研究会
代表:門崎允昭
事務局長:ピーター・ニコルス

北海道熊研究会は熊の実像を調査研究することで、人や家畜、およびその他の経済的被害を予防し、かつ人と熊とが共存できる社会を実現するため提言と啓蒙活動を行っている。



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>>> ヒグマと共に暮らす その2
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