トカゲ太郎のワンダー・ワールド
アカウミガメの旅は続く
アメリカ海洋大気局(NOAA)

English



アカウミガメの旅は続く アメリカ海洋大気局(NOAA)

-東シナ海のアカウミガメを探る-

Jack the Lizard
Jack the Lizard
Dr. Donald Kobayashi

若いアオウミガメを持つコバヤシ博士。NOAAのコバヤシ博士とバラス博士は、四国の
室戸沖での混獲についても調査を行っている。

アカウミガメは寿命の長い、とても広い範囲に生息する生き物だ。 しかも広大な海の中に暮らしているため、その生態や生息環境について知ることはとても難しい。 ただ、人工衛星を使って情報を集めることで彼らの外洋での生活を観察することができるようになった。

甲羅に取り付けられた電波発信機は、地中海や太平洋などの世界中の海で暮らすアカウミガメの生態についてさまざまな情報をこれまで伝えてきた。 北太平洋のアカウミガメは産卵地である日本で生まれ、アメリカ西海岸のバハ・カリフォルニア沖に移動する。 この旅の途中、彼らが食べ物を探し、生活する舞台は北太平洋の外洋だ。 しかしながら、すべての北太平洋のアカウミガメが日本で生まれてすぐに太平洋を横断するものではない。 そのうちのいく匹かは東シナ海にしばらく滞在する。

東シナ海のアカウミガメは台湾漁船の網にしばしば引っ掛かる。 今のところこのような混獲にもかかわらず、この地域のアカウミガメの生息数は安定した状態を保っている。 しかし、この地域のアカウミガメの生息数をこのまま維持することは世界的にも貴重なことだ。 このため、この地域の海の特徴とアカウミガメとの関係を知ることがとても大切になってきた。 そこでNOAAではこの地域における渦状の海流とアカウミガメの動きについて調査することになった。

Jack the Lizard

渦とウミガメ

調査に先だって、生殖をしない34匹のウミガメが台湾漁船で混獲されていた。 調査を行うため、これらのすべてのウミガメに発信機が取り付けられ、台湾北東部の沖合で放された。 追跡調査は2002年5月から始まり、2009年6月まで続けられた。 発信機からのデータを分析することで日々のウミガメの位置を知ることができると同時に、この位置情報と調査地域における渦(エディー)の動きとの比較も行われた。 さらに人工衛星から送られてくる海洋データから、渦の大きさや回転速度、強さ、移動方向、反時計回りか時計回りか、などその特徴を観測する。

Loggerhead is ready to be relased.

調査対象となったアカウミガメを前にする国立台湾海洋大学の程一駿教授とアシスタント。海洋生態学を専門とする程教授はNOAAの台湾における最も重要なパートナーの一人だ。 今回の調査で程教授は現地の漁師と協力して発信機の取り付けと放流を行った。

Jack the Lizard
Loggerhead is ready to be relased.
発信機を取り付けられ、放流を待つアカウミガメ。

(写真提供 NOAA)





A specific example of eddy size and location on 25 May 2005

2005年5月25日に観測した渦(エディ)の大きさと位置。 青は反時計回り、赤は時計回りの渦の流れの方向を示している。 線の太い渦は流れが強く、細いものは弱いことを表している。 黒い星印はアカウミガメの位置。

(写真提供 NOAA)


The photo of eddy, taken by astronauts.

宇宙飛行士によって撮影された珍しい渦(エディ)の写真。 台風ではない。比較的小さな渦とかなり大きな渦が黒潮の流れとの境で形作られていることがわかる。

(写真提供 NOAA ならびに NASA(アメリカ航空宇宙局)

東シナ海

人工衛星からの情報を解析したところアカウミガメの動きにいくつかの特徴があることが分かった。 第一にほとんどのアカウミガメたちが台湾、中国、日本、韓国の海域にとどまっていたことだ。 特に、多くのアカウミガメたちが東シナ海の大陸棚に滞在していた。

NOAA太平洋諸島漁業科学センタードナルド・コバヤシ博士はこの結果について、

「東シナ海の大陸棚は海洋生物のホットスポットです。 大陸から東シナ海に注ぐ揚子江(長江)が関係していると思います。 この大河によって東シナ海に淡水が運ばれ、周辺海域の海水が栄養豊かなものになるのです。 浅い海であることもまたアカウミガメが集まる理由の一つだと考えられます。 なぜならおそらくアカウミガメたちは海底で食べ物を探すからです。 そのほかに現地の漁業の多くがこの海域で操業していて、それがアカウミガメにとっても魅力なのかもしれません。 同じような獲物を狙っていたり、捨てられた魚などをあさったりできるからです。 いずれにせよもっと調べなければならないことがあります。 それには現地をよく知る専門家との連携がとても大切です。」 と説明する。

第2に、調査期間中、対象海域において明らかに渦は発生し、大陸棚から離れて暮らしていた数匹のアカウミガメは渦の近くにとどまる傾向があった。

「ホットスポットにとどまるカメと沖合のカメでは違いがあります。 渦はクラゲのような食べ物を捕るウミガメには絶好の機会を与えてくれます。 沖合またはホットスポット以外の場所に棲むアカウミガメにとって渦がとても重要な場所であると考えられますが、この行動パターンを知るにはさらに分析が必要です。」 と、コバヤシ博士は調査結果について慎重に答えた。



この記事は、NOAAの調査報告書
「台湾沖合のアカウミガメの動き、ならびに東シナ海のホットスポットにおけるアカウミガメの行動と渦の調査」(2011年1月7日)と
NOAAの関係者からの取材によって構成されています。

"Loggerhead turtle (Caretta caretta) movement off the coast of Taiwan:
Characterization of a hotspot in the East China Sea and investigation of mesoscale eddies"


Donald R. Kobayashi, Pacific Islands Fisheries Science Center, NOAA, Honolulu, Hawaii, USA
I-Jiunn Cheng, Institute of Marine Biology, National Taiwan Ocean University, Keelung, Taiwan, ROC
Denise M. Parker, Joint Institute for Marine and Atmospheric Research, University of Hawaii, Honolulu, Hawaii, USA
Jeffrey J. Polovina, Pacific Islands Fisheries Science Center, NOAA, Honolulu, Hawaii, USA
Naoki Kamezaki, Sea Turtle Association of Japan, Nagao-motomachi, Hirakata City, Osaka, Japan
George H. Balazs, Pacific Islands Fisheries Science Center, NOAA, Honolulu, Hawaii, USA



Jack the Lizard






1