トカゲ太郎のワンダー・ワールド
目に見えない世界 プランクトン
English


絵をクリックすると、別ウィンドーが開き画像を拡大して見ることができます。

顕微鏡でしか見えないほどの小さな世界。 そこにはすべての生き物の食物連鎖を支える根源がある。 単細胞といってもその生態はさまざま。 まるで大きな小宇宙が広がるかのようだ。 トカゲ太郎は滋賀県立琵琶湖博物館を訪ね、その魅力についてお話をうかがったよ。

(訪問日 2008年7月16日)


目に見えない世界

琵琶湖博物館では、小中高生を対象に無料で体験学習を行っている。 参加した生徒たちは博物館近くの湖岸でプランクトンを採集し、実習室で顕微鏡をのぞきながらプランクトンを見つける。 見つけたプランクトンは個体ごとにスケッチして、用意された種類別の写真と見比べて名前や属する仲間についてつきとめる。 その後、動物、植物それぞれのプランクトンについて博物館の職員が説明をしてくれる。

この日はアナベナやミクロキスティスなどが多く採集された。 これらの藍藻のなかまは湖や池の表面をおおう 「アオコ」 と呼ばれる現象を起こし、水質の悪化をまねく。

モニターに映っているのは体長1cmにもなる大きなミジンコのなかま、ノロだ。 小エビのような体つきで一個の複眼をもっている。 まるでオバケの 「一つ目小僧」 のようだ。

大塚泰介さん

植物プランクトン担当の学芸員大塚泰介さん。 動かないため識別しにくい植物プランクトンを特徴をしめしながら丁寧に教えてくれる。


巨大なプランクトン

ふつう 「プランクトン」 というと微小な生物のことをすぐに想いうかべるけど、実際には自ら泳ぐことができない、または泳ぐ力の弱い、水中を漂って生活している浮遊生物のことをさす。

だから小さいものは千分の一ミリメートルのピコプランクトンから大きいものは2メートルを超えるメガプランクトンまでいる。 網にひっかかって漁師さんたちを困らせるエチゼンクラゲも実はプランクトンなのだ。

ただ、微小生物のことを総称してプランクトンと一般的には呼んでいるから間違いではない。

アオコと逃げる魚


ゾウリムシは男性か? それとも女性?

プランクトン琵琶湖だけでも数千種類いると推定され、その中のわずか八百種しかリストアップされていない。 プランクトンは陸上の大型の生物と同じように光合成をする植物プランクトンと光合成をしない動物プランクトンの大きく二つに分けられる。 また色も形も大きさもさまざまだ。

太陽光の紫外線から身を守るためピンク色をしたものや食べ物によって赤くなったものまで色彩豊かな体をしている。 また、砂粒をくっつけて巣を作るものや体の回りにねばねばした粘液を出して身を守るものまで、不思議な生態に満ちている。

なかでも面白いのがゾウリムシのなかまで、性別がメスとオスだけでなくA、B、Cと複数あるものがいるという。

水辺の微生物

左がレビコレプス・ビワエ、右はミドリゾウリムシ。 レビコレプス・ビワエミジンコの死骸を食べる琵琶湖のハイエナだ。


スーパー単細胞

生命の誕生は約30億年前とされている。 現在生きているすべての生き物の元になったものが何であったかはまだ分かっていない。 今のところ、その元になった生き物からさまざまな生き物が枝分かれして進化したと推測されている。 人間やその他の大型動物とは別の進化をとげた多くの微小生物は身体が一個の細胞からなる単細胞生物。 そのため、目、鼻、耳、口と感覚器官は分かれていない。 ただ感じる能力はしっかりとあり、その証拠に光に向かって進むものやエサの臭いをかぎわけるもの、磁力を感じるものもいる。

「コンピューターの集積回路みたいなもので感覚器がひとつにまとまっているのです。 決して劣っているわけではありません」 と言葉の印象から誤解しないで欲しいと楠岡さんはいう。

湖の環境と人びとのくらしをテーマにしたC展示室内にあるプランクトンコーナーは、今年3月にリニューアルされ展示スペースが広くなった。

実際、驚くべき能力をもったプランクトンは数多くいる。例えば、不老不死のアメーバ。 ふつうアメーバは分裂を繰り返して数を増やし、分裂の限界がくると他のなかまと接合して若返る。 しかし、不老不死アメーバは分裂に限りがなく自分の完全なクローンを生み出し続けるのだ。 このほか日向ぼっこするだけで生き延びるゾウリムシがいる。 ミドリゾウリムシは、身体の中に共生藻類クロレラがいて、クロレラが光合成で作り出す有機物をミドリゾウリムシがいただき、かわりに自分の排泄するリンチッソクロレラにあげるのだ。 このおかげでエサの少ない時期でもミドリゾウリムシは平気で生き延びられる。

楠岡秦さん

主任学芸員の楠岡秦さんは今年7月、新種のせん毛虫(ゾウリムシのなかま)の発見を公表した。 楠岡さんとザルツブルグ大学のウィリヘルム・フォイスナー教授、宮城教育大学の島野智之准教授の研究チームは共同で調査を行い、2006年11月に琵琶湖博物館近くの湖岸で見つかったコレプス科のせん毛虫が新属であることをつきとめた。 そして、今年6月に国際原生生物学会の学術誌  「ジャーナル・オブ・ユーカリオティック・マイクロバイオロジー」 に論文を発表した。 新しいせん毛虫の名前はフォイスナー教授がレビコレプス・ビワエと名づけた。 レビは「滑らかな」、ビワエは「琵琶湖の」という意味。 古代湖である琵琶湖でとても古い時代に成立した種類であると考えられ、古代湖の種の分化について知る貴重な手がかりになる。

魚類や水生生物の食物となって生態系を支えるプランクトン。 一見しただけではそのすごさは分からないけど、よーくその世界をのぞくと不思議な小宇宙が広がっていてその魅力はつきない。

注: 絵の中のプランクトンは、見やすくするために、実際の比率よりも大きく描いています。