トカゲ太郎のワンダー・ワールド
囚われのホッキョクグマ
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(2013年9月)   

チンパンジーやオラウータン、ゴリラなどの動物は人に飼われることに向いていない。ペンギンのように比較的小さな動物でさえ快適な環境を整えてあげることはとても難しい。例えば、野生のペンギンたちはたいてい繁殖地からエサ場まで長い道のりを歩いているけど、飼育下でこのような状況を再現することは不可能に近い。

そしていろいろな動物の中で最も適していないのはホッキョクグマだ。飼育に適していないことは極限の風土に暮らしていることから容易に想像できる。野生のホッキョクグマは極寒と広大な大地に合った身体と暮らし方をしているのだ。



ワモンアザラシ

寒さは平気、でも暑さは無理

ホッキョクグマの身体は表面とその下の隠れた部分の二重の毛で覆われている。空洞で油に包まれた表面の毛は身体が濡れたときに水をはじき寒さから守ってくれる。また、内側の毛とその下にある黒い皮ふは、熱を吸収し身体の温かさを保ってくれる。皮下の分厚い脂肪も体温の調整と冷たい空気を遮断することに役立っている。

でも、反対に猛暑の中で体温を調整するのはホッキョクグマにとって至難の業だ。昼間の暑い時、野生のホッキョクグマは地面を掘ってベッドを作りその中で身体を休めて涼をとる。また、そうしたベッドを砂や雪で覆いさらに断熱効果を高めることもしばしばある。地衣類やコケ、草、コンブなどの植物もそうした断熱材として利用する。岩や樹木もまた直射日光をさえぎり、避難する場所として利用される。ホッキョクグマにとって体温が上がりすぎることは絶対に避けなければならないからだ。

放浪する動物

ある動物が飼育に適しているかどうかはその生息域の広さと一日に歩き回る距離の長さと深く関係している。ホッキョクグマは獲物を求めて1日80km以上歩く。また移動する時に必要があれば100km以上も泳ぎ続けることができる。

普段から長い距離を放浪する動物にとって、放浪する行動そのものが脳の中枢神経の発達に欠かせない行動であるようだ。ホッキョクグマが暮らしているのは北極圏とカナダの一部の地域だ。そのような広大な土地で獲物を見つけるのは簡単ではない。だからこそホッキョクグマは長い距離をウロウロ歩き回らなければならないのだ。

北極の冬は気温が零下40℃まで下がる。これに風の効果が加わると気温はさらに下がることになる。このような極限状態の中で獲物を捕まえられないとき、ホッキョクグマは新陳代謝を緩やかにすることで耐えている。さらに、ホッキョクグマの鼻はとても発達していて1.6km先の獲物の臭いを嗅ぎつけることができる。

迫る悲しい出来事

ホッキョクグマが最強の捕食動物だということに疑問の余地はない。大人のオスの体重は最大で680km、体長は3mに達する。現在の生息数は2万から2万5千頭ほどと考えられている。主な獲物はアゴヒゲアザラシとワモンアザラシだ。特にそれらのアザラシの皮と脂肪を好んで食べる。もっと大型のセイウチやシロイルカ、イッカクなども捕まえる。

昨年の夏、アルゼンチンのブエノスアイレスで1頭のホッキョクグマが亡くなった。熱中症だったようだ。気温が30℃以上になる国々は北極圏にもともと暮らす動物の飼育に適していない。イギリスやスイス、ドイツといった国々の動物園ではホッキョクグマの飼育を次第に止めていく流れにある。