トカゲ太郎のワンダー・ワールド
雑木林の生き物たち




雑木林

雑木林って何?

トカゲ太郎

雑木林(ぞうきばやし)は人の手の入った人工の森林。自然林を切り開いて人間にとって必要なクヌギやナラなどを替わりに植えた場所だ。昔は田畑のために落ち葉などを肥料にしたり、燃料のための薪や炭を雑木林の木々から作っていたりしていた。でも雑木林は同じ人工林のスギ林とは全く違う生き物の森だ。なぜなら雑木林はクヌギやナラだけでなくアカマツやシイ、カシなど多種多様な樹木から成り立っているからだ。

ニホンリス
ニホンリス
植物の種子を食べるが、運ばれて食べ残された種はいろいろな場所で発芽できる。

雑木林は
どこにある?

雑木林
北海道の雑木林。 秋は様々に彩られる。

雑木林はその成り立ちからいって奥山ではなく農村周辺に点在していることが多い。それと都市にも神社の周りに残る鎮守の森や市民・県民の森として整備された雑木林がある。さらに大学やその他の研究施設がもっている場合もある。


マヒワ
マヒワ
メジロ
メジロ

ミヤマクワガタ
ミヤマクワガタ
カナブン
カナブン
羽化したばかりのセミ
襲われる可能性が低い夜間に成虫へと脱皮したセミ

雑木林で自生するきのこ
写真提供:平野虎丸氏


雑木林で自生するきのこ
食べられるものも、食べられない毒キノコも、両方のキノコが雑木林の恵みだ。

雑木林のしくみ

雑木林は放っておくとその土地の地形や気候にあった植生にもどっていってしまう。だからときどき手入れが必要になってくる。例えばクヌギは成長が早く、切った後も切り株から新しい芽が出て数年で再利用できるため、材木用やシイタケ栽培のほだぎとして育てられてきた。ただ、ある程度成長するまでは枝打ちや下草刈りが必要だ。でも、定期的に伐採することで、自然に日光が森のところどころに入りこみ新たな樹木が育つことができる。

雑木林の中で暮らす生き物もまた雑木林の維持するために大切な役割を担っている。なかでもキノコなどの菌類の果たす役割はとても大きい。樹木はリグニンとよばれる物質で腐れることから身を守っている。だからたとえ寿命や病気で倒れたとしてもそのままでは朽ちて腐れていくことはない。そこで登場するのがキノコだ。自然の中ではなかなか分解しにくいリグニンをキノコは分解できるため、キノコのでた倒木は次第に腐蝕していく。そして次に現れるのがクワガタムシやカブトムシの幼虫だ。これらの幼虫たちはキノコなどによって腐れた樹木をエサにして育っていく。こうしたいくつかの生き物たちの働きによってようやく倒れた樹木は栄養豊かな土へと変わる。さらにシロアリの働きも見逃せない。

長年森林を観察してきたエコシステム協会の平野虎丸さんは「シロアリというとすぐに家の木材を食う害虫とみなされますが、森の中では枯れた樹木を食べてくれることで森の若返りに貢献しています。人間にとって決して迷惑ばかりかけているわけではありません」 とシロアリを弁護する。実際、あるシロアリは自分自身で植物の硬いセルロースを分解し、土壌を作ることに一役買っている。また、シロアリによって開けられた樹木の洞は小鳥やリスなどの巣穴として利用される。



アキニレの樹に集まって樹液を吸う昆虫たち

樹液に集まる昆虫たち
樹液に集まる昆虫たち 樹液に集まる昆虫たち
カブトムシの幼虫は腐った樹木や枯れ葉を食べて育つ。成虫は夜行性で昼間は枯れ葉や土の下に隠れている。成虫の食べ物は樹液で、カミキリムシの幼虫などが傷つけた樹皮からしみ出る樹液をなめる。

カブトムシの幼虫は腐った樹木や枯れ葉を食べて育つ。成虫は夜行性で昼間は枯れ葉や土の下に隠れている。成虫の食べ物は樹液で、カミキリムシの幼虫などが傷つけた樹皮からしみ出る樹液をなめる。


トカゲ太郎による雑木林の虫たちのお話は、もっともっとあるよ!
カブトムシのお話クワガタのお話セミのお話


雑木林と清流
雑木林で浄化された水が清流を作る

雑木林の危機

このように生き物と雑木林もちつもたれつで暮らしている。でも、電気・ガスなど燃料が変化し、化学肥料などが手に入るようになると雑木林が人間の生活のためにあまり利用されなくなった。また、住宅地やゴルフ場の開発によって雑木林は次第にその姿を消していった。さらに放置された竹林が勢力をのばして雑木林を浸食して樹木を枯らせているケースもある。


アカハライモリ
アカハライモリ
池や小川の淀みなど流れのないところに暮らす。多すぎると水質が悪化するイトミミズや蚊の幼虫のボウフラなどを食べてくれる。
ダルマガエル
ダルマガエル
近年数が減っている。
サワガニ
サワガニは日本で唯一、一生を通じて淡水に暮らすカニ。とてもきれいな水にしか棲めない。

雑木林は必要です

トカゲ太郎


オオスズメバチ
写真提供:平野虎丸氏

オオスズメバチは雑木林の減少で本来の棲みかを追われてしまった。このため近年人家に巣を作って問題になっている。

雑木林はもちろんそこに暮らす生き物たちにとって大事な自然環境だけど、人間にとって大きな恩恵を与えてくれる。例えば、様々な樹木や下草が土壌をしっかりとつかんでいるため大雨などによる土砂の流出を防ぎ、それとともに水を土壌に蓄えて河に流れる水の量を調節してくれる。さらに蓄えられた水は浄化されてきれいな水を私たちに供給してくれる。さらに雑木林の樹木は大気の熱を吸収し、気象を穏やかにしてくれる。加えて大気中に含まれる有害物質やホコリを吸収するなど大気の浄化作用ももっている。

クマバチ
初夏にあらわれるクマバチ。大きくて恐そうだけどとてもおとなしいハチだ。ミツバチと同じように花の蜜を食べる。
オオカマキリ
オオカマキリ
ヒメアカタテハ
ヒメアカタテハ
ニホンミツバチ
写真提供:平野虎丸氏
ニホンミツバチは雑木林に咲くいろいろな花々から蜜を集める。


また、有機農業を営む農家にとっては雑木林の落ち葉や下草は有機肥料の原料となるため欠かせない。一方、都市の近くでは騒音を軽減する効果もあるようだ。

こうした雑木林の働きは人間の生活を支えてくれていることは確かだが、でも何より大事なことは人々が自然や生き物と手軽に触れ合える場であるということだ。昆虫採集や野生動物の観察など、自然のしくみを知る上で欠かせない活動ができる。また、樹木や花々の香り楽しんだり、鳥のさえずりを聞いたりすることで、私たちはとても豊かな気持ちになれる。

カラスアゲハとヤブキリ
カラスアゲハとヤブキリ(キリギリスの仲間)


ホンドギツネ
ホンドギツネ
ネズミやその他の小動物を食べることで、ネズミなど繁殖が盛んな種が多くなり過ぎることを防ぐ
ホンドタヌキ
ホンドタヌキ
キツネと同様に日本の民話や伝説に数多く登場する生き物で、日本の文化を継承していく上でも欠かせない存在だ。